世界初、胎児頻脈性不整脈に対する多施設共同臨床試験
国立成育医療研究センターは8月20日、胎児頻脈性不整脈に対する多施設共同臨床試験を世界で初めて行ったと発表した。同研究は、国立循環器病研究センター、久留米大学病院、三重大学医学部附属病院など15施設のグループによるものである。
画像はリリースより
胎児頻脈性不整脈は、2万分娩に1人とされるまれな疾患。症状が持続した場合には、胸や腹に水がたまったり、全身がむくんだりする胎児水腫へ進行し、予後不良となることがある。そのため、以前より母体に抗不整脈薬を投与する胎内治療が試みられており、ジゴキシン、ソタロール、フレカイニドといった抗不整脈薬を使用した報告が多数あった。しかし、そのほとんどが後方視的研究であることから、最適なプロトコールは確立しておらず、有害事象についても十分な検証がなされていなかった。そこで今回、15施設が共同で、胎児頻脈性不整脈に対して、母親に抗不整脈薬を投与して胎内で治療するプロトコール治療の有効性および安全性を確認する前向き介入試験を行った。
胎内治療で効果が見られた場合でも、新生児期に約3割再発
試験の結果、約90%で胎児頻脈性不整脈が消失し、プロトコール治療の高い有効性が確認されたという。胎内治療で効果が見られた場合でも、新生児期に約30%で頻脈性不整脈が再発しており、出生後2週間は特に注意深い観察が必要と考えられた。
また、母体の有害事象として、治療薬剤との関連が否定できないものが高頻度で認められたという。しかし、重篤なものはまれで、薬剤減量などによって治療の継続が可能だった。胎児では、治療薬剤との関連が否定できない有害事象が約25%で確認された。胎児死亡例(2例)および早期娩出となった症例(2例)が含まれていたことから、産科、小児循環器科、新生児科の共同による慎重な管理および迅速な対応が必要と考えられるとしている。
今回の試験結果により、胎児治療のひとつの方法として、母体への抗不整脈薬を用いた胎内治療の有効性および安全性が初めて示された。同研究成果は、日本胎児心臓病学会のガイドラインに掲載される予定で、将来的に国内外で実施される臨床試験において比較対象となる重要なデータと考えられる。「今回の研究成果によって、胎児頻脈性不整脈に対する胎内治療が安全に行える体制の整備が進むことが期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立成育医療研究センター ニュースリリース