3年相対生存率は72.1%、前回より改善
国立がん研究センターは8月8日、2012年に診断されたがん患者の3年を経過した生存率と、2009~2010年に診断された患者の5年を経過した生存率を報告書にまとめ、ウェブサイトで公開した。全国のがん診療連携拠点病院等から収集した院内がん情報を用いてまとめたもの。生存率は2つ分類があり、1つは実際に診療した患者さんの生存割合で、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた「実測生存率」。もう1つは、がん以外の死因による死亡などの影響を取り除いた(完全には取り除けていない可能性を含む)「相対生存率」だ。
画像はリリースより
3年生存率は、今回が2回目の報告で、286施設339,376例を対象に調査が行われた。胃、大腸、乳房、肝臓、肺、食道、膵臓、前立腺、子宮頸部、子宮体部、膀胱と、患者等の要望により今回から追加された喉頭、胆のう、腎、腎盂尿管の部位別、病期別(がんの進行状況)等に生存率を集計した。
全がんの3年生存率は、実測生存率67.2%(前回:66.3%)、相対生存率72.1%(前回71.3%)だった。また、部位・病期別では、喉頭の相対生存率が、1期96.0%、2期90.2%と90%を超えており、放射線治療が有効である比較的早期の場合は生存率が高いといえる。同様に腎の1期98.5%、2期94.3%、腎盂・尿管の1期が90.1%といずれも90%を超えていた。一方で、胆のうは膵臓とともに難治性がんといわれているが、根治切除可能な1期では91.1%、2期では77.4%と比較的良好だった。がんによっては、同じ病期であっても治療の難しさなどに違いがあり、生存率は異なっている。
5年相対生存率は66.1%、部位により生存率に差
5年生存率は、今回が4回目の調査で、277施設568,005例が対象となった。全国集計と各都道府県、施設別の集計データがあり、それぞれ部位・病期別のデータと、全国集計は性別、年齢階級別も公表されている。全体での全がんの5年実測生存率は58.6%(前回58.5%)、相対生存率は66.1%(前回65.8%)だった。性別の割合は男性が58.2%、女性が41.3%でやや男性が高い割合。診断時の年齢は、男女ともに70歳代が最も多く、70歳代、80歳代以上を合わせると約47%の割合だった。部位・病期別にみると、女性乳房は1期・2期が多く、比較的若い世代の割合が多くなっており、他の部位も同様だが、より長期的な視野でみていくことが重要と考えられる。また、前立腺は相対生存率がほぼ100%。病期別にみても、1期、2期、3期ともに相対生存率は100%を超えている。
生存率には患者背景(年齢、手術の有無、併存疾患の有無とその程度等)が大きく影響するため、都道府県・施設の特性(高齢者・併存疾患のある患者を主に診療している等)をあわせて理解する必要がある。各医療機関が、自らの医療の質を見直すきっかけとなるデータを提供すること、国民に情報を公開することで、がん医療の透明性を確保すること等を目的として、がん診療連携拠点病院等の生存率を集計している。特に、施設別生存率については、各施設の生存率がただちに当該施設の治療成績を示すわけではないこと、さらに施設間の比較には適さないことに留意するよう呼びかけている。
▼関連リンク
・国立がん研究センター プレスリリース