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臍帯血移植における予後予測因子を日欧共同研究で解明-京大ら

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2019年08月19日 AM11:00

臍帯血移植に関連した合併症がやや高頻度、原因探る

京都大学は8月15日、日欧における成人単一臍帯血移植の予後予測因子を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院の諫田淳也助教、日本造血細胞移植データセンターの熱田由子センター長、ユーロコードのÉliane Gluckman教授、欧州血液骨髄移植学会急性白血病ワーキングパーティ―のArnon Nagler教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Leukemia」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

同種造血幹細胞移植は、再発・難治性白血病に対して根治が期待できる治療法。免疫学的な合併症のリスクを低下させるため、血縁あるいは骨髄バンクにおけるHLAが一致するドナーが最も良いドナーと考えられているが、約半数の患者において適切な時期にHLA一致ドナーは見つからないとされる。臍帯血は、HLA一致ドナーに代わる代替移植ソースとして急速に拡大、臍帯血移植は日本で年間約1,000例以上と、世界中で最も多く行われている。また、HLA一致非血縁者間骨髄移植とほぼ同等の成績であることが示されている。一方、臍帯血移植においては、生着不全や早期の移植関連合併症の頻度が、他の移植ソースと比べてやや高いことが問題となっており、移植成績を改善させるためには、予後予測因子の究明が必要と考えられていた。そこで、同研究グループは、人種によらない普遍的な予後予測因子を見出すため、日本と欧米において初めての国際共同研究を行った。

患者背景に大きな差、一方予後予測因子に大きな差はみられず

研究対象は、2000~2014年の間に、初回の単一臍帯血移植を受けた、成人急性白血病患者。日本からは206の移植施設から3,764例、欧州からはフランスやドイツ、イギリスをはじめ25か国135移植施設から1,027例が対象となった。患者の年齢中央値は日本51歳、欧州38歳、HLA適合度に関しては、欧州よりも日本のほうがHLA不適合数を多く認めた。また、移植時病期は、再発高リスク群が日本56%、欧州33%。臍帯血の有核細胞数は、日本 2.6×10の7乗/kg、欧州3.5×10の7乗/kgと欧州において有意に有核細胞数の多い臍帯血が使用された。抗胸腺細胞免疫グロブリンは日本では2%でしか用いられていない一方、欧州では70%に用いられていた。このように、日本と欧州において患者背景に非常に大きな差を認めることになったという。

移植後3年時点における生存率は、日本41%、欧州33%。再発率はそれぞれ34%、31%とほぼ同等だったが、無再発死亡率は日本29%、欧州40%と欧州のほうが高値だった。また、移植年が新しく、患者年齢が若く、移植時寛解で白血病の再発リスクが低いほど、生存率が高いという日欧に共通した点も明らかになった。

さらに、移植施設の臍帯血移植経験数は日本において生存に有意な影響およぼしていたこともわかった。これは、経験数が多い施設ほど成績が良好という結果を意味する。HLA不適合の影響は、日本において生存には影響ないものの、再発率の低下、移植関連死亡率の増加と関連することも判明した。

日本と欧州で患者背景や治療内容は大きく異なるものの、予後予測因子は、日本、欧州で大きな差がないことを証明するものとなった。このことは、日本と欧州の共同研究を加速させるための重要な基礎データであるとして、今後の研究に期待が寄せられる。

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