さまざまな色のグレア錯視に対する瞳孔反応を計測
豊橋技術科学大学は8月9日、ヒトがさまざまな色のグレア錯視を見たときに知覚される明るさと、瞳孔反応を計測し、グレア錯視に対する瞳孔縮小が、その明るさ知覚の程度にしたがって生じていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大情報・知能工学系の鈴木雄太博士後期課程、南哲人准教授らとオスロ大学の研究チームによるもの。研究成果は「Acta Psychologica」に掲載されている。
画像はリリースより
グレア錯視は、中央に向かって輝度グラデーションを持ち、それによってより明るく、もしくは輝いて知覚される錯視のひとつ。瞳孔は、暗い場所では散大し(散瞳)、明るい場所では縮小して(縮瞳)、目に入る光を調節する働きを持つ一方、ヒトが錯覚で明るく感じたときにも、同様に縮瞳することが知られている。
青いグレア錯視が最も明るく知覚され、瞳孔が大きく縮小
研究チームは、空に関連のある色は青で、太陽の光は輝度の勾配を持つように見えるので、青いグレア錯視は最も明るく知覚されるのではないかと推察。視覚システムにおいて、生物学的な背景を持つ予測が、入力を理解するために重要と考え、ヒトが明るさの錯視(グレア錯視)を見ているときの瞳孔(眼球にある、いわゆる黒目と呼ばれる部分)の大きさを計測した。その結果、青いグレア錯視は他の色と比べて明るいと評価され、またその錯視を見ているときには大きな瞳孔縮小が見られた。これは、錯視の効果をなくした視覚刺激に対しては観測されなかったため、グレア錯視に特異的な効果であると考えられるという。
また、瞳孔が縮瞳・散瞳するような対光反射の反応は、脳処理において非常に簡潔な経路をたどっており、研究で得られた青色グレア錯視に対する瞳孔反応も同様に、比較的早い反応時間で、他の色のグレア錯視よりも大きな縮小を示した。色依存の錯視に対する早い瞳孔反応は、進化の過程でヒトが獲得してきたことを示す可能性がある。また、瞳孔の縮瞳と個人の明るさ知覚には相関関係が見られたことから、明るさ知覚における個人差を評価する簡単なツールとして、瞳孔反応が利用できる可能性が示された。
これまで主観的な明るさ知覚は本人にしかわからず、一人称視点での知覚報告に頼るしかなかったが、今回、明るさ知覚と瞳孔縮小との相関が見られたことで、客観的な明るさ知覚を評価する指標としての新たな展開が期待できる。研究グループは、「瞳孔反応は非接触計測によって心的状態を探るための有力な手がかりとして注目されており、ヒト同士のコミュニケーション、ヒトとロボットのコミュニケーションを飛躍的に発展させるイノベーティブな基盤技術となるだろう」と、述べている。
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・豊橋技術科学大学 プレスリリース