先進諸国の生活満足度、国際的に比較可能なデータをマクロ的に分析
東京理科大学は8月9日、日本を含むOECD(経済協力開発機構)加盟34か国のデータに基づき、生活上のさまざまな要素が男女の生活満足度にどう影響するのかを分析し、その結果を発表した。この研究は、同大経営学部の野田英雄教授によるもの。研究成果は「Journal of Happiness Studies」に掲載されている。
画像はリリースより
近年、ワークライフバランスは組織および雇用者の双方にとって重要な課題となっている。野田教授が既存の文献調査を行ったところ、ワークライフバランスに関する多くの既存研究は、会社規模、ジェンダー、管理レベル、個々人のキャリアステージ等といったミクロレベルのデータを使用していることがわかった。多くの先進国ではワークライフバランス政策が実施されており、国際的なトレンドだ。野田教授は、調査対象を1つの国内や少数の国に限定するだけでなく、国際的に比較可能なデータを用いて先進諸国の共通の特徴を特定することで、多くの国々にとって有益な知見が得られると考え、今回の研究を実施した。
女性より男性のほうがワークライフバランスの改善が必要?
研究では、マクロレベルの視点から、OECDの「より良い暮らし指標(Better Life Index)」のデータを収集し、「ワークライフバランス改善の試みが、生活満足度にどの程度変化をもたらすか」を評価するための値(生活満足度のワークライフバランス弾力性)を算出し、分析を行った。また、OECD加盟34か国の男女双方の主観的健康状態、長期失業、所得格差と生活満足度の関係についても分析を行った。
その結果、ワークライフバランスの指標である「レジャーとパーソナルケアに費やす時間」は、EU加盟国の間で一様に高く、特にノルウェーとデンマークでは、生活満足度のスコアが同様に著しく高い値だった。34か国全てにおいて、男女問わず、スコアの傾向は類似していた。また、EU諸国、ニュージーランド、オーストラリア、イスラエル、カナダ、米国といったGDPの高い国々では、GDPと生活満足度の間に大まかな関連性があることも見出された。
従来のワークライフバランスの政策は、女性の懸案事項に焦点が当てられてきたが、今回の研究により、「レジャーとパーソナルケアに費やす時間」を必要としているのは女性よりもむしろ男性の方であり、その時間が得られた場合の生活満足度への影響は、男性の方が大きいことが明らかになった。これは従来考えられてきた既存の見解とは異なる知見だ。
今回の調査結果を受けて野田教授は、「所得格差による影響については、統計的な有意性は示されなかったが、さらに変数を追加して研究を行うことが必要。AIやスマートテクノロジー、ロボット工学などの急速な情報技術の発展による第四次産業革命とも呼ばれる変化の時代であり、労働環境も否応なく変化することが予想され、こうした変化がワークライフバランスに与える影響も調べていく必要がある」と述べている。
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