妊婦の高年齢化でダウン症候群の出生数は上がっているのか
国立成育医療研究センターは8月8日、日本におけるダウン症候群(21トリソミー)の年間出生数の推定値を報告し、この7年におけるダウン症候群の出生数は横ばいであると発表した。この研究は、同センター周産期・母性診療センターの佐々木愛子医師、左合治彦医師によるもの。研究成果は「American Journal of Medical Genetics Part A」に掲載されている。
画像はリリースより
日本は先進諸外国の中でも、妊婦の出産年齢が最も高い国のひとつ。ダウン症候群など妊婦の高年齢化に関連する一部疾患を対象としたNIPT(母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査)を始めとする出生前診断の実施には賛否両論あるものの、晩婚・晩妊娠化に伴う妊婦や家族自身の不安や、インターネットを介した自由な情報収集によりそのニーズは広がりつつある。一方、日本ではダウン症候群の出生数は公的な登録システムがなく、実際の出生数の動向は不明。よって研究グループは、出産届をもとに報告されている出産母体の出産時年齢と出生数から、単純に予測されるダウン症候群の出生数に出生前診断の影響を加味してダウン症候群の出生数を推定した。
高年妊娠が増加するも横ばいの理由に、出生前診断の普及が関与か
今回の報告は、日本における母親の出産時年齢別出生数の統計と母親の年齢個別のダウン症候群出生割合、出生前診断(確定検査)数、人工妊娠中断率をもとに、年間のダウン症候群出生数を推定したもの。ダウン症候群児の出生率は、妊婦の高年齢化に伴い増加することが知られている。2008年に故梶井正山口大学名誉教授が、日本は高年妊娠が増加しており、将来はダウン症候群児数が激増すると予測した論文を発表した。しかし、今回の調査で、7年間(2010〜2016年)のダウン症候群の出生数は年間2,200人前後でほぼ横ばいであり、急速な妊婦の高年齢化の下、出生前診断の普及によっても均衡が保たれていると推察された。
この結果を受けて研究グループは、「現在の出生前検査を取り巻く日本の状況を把握し、今後を予測して備えることは、女性の性と生殖に関する健康と権利(reproductive health and rights)を含めた医療・社会福祉制度を考えるにあたり、非常に重要なことと考えられる」と、述べている。(
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