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クチナシ由来の色素成分「クロセチン」が、小児の近視進行を抑制-慶大ら

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2019年08月14日 AM11:45

EGR-1の発現を高め、眼軸長の伸長と屈折度数の変化を有意に抑制する「

慶應義塾大学は8月8日、クロセチンが小児の眼軸長伸長、屈折度数の近視化を有意に抑制することを確認したと発表した。この研究は、同大医学部眼科学教室の坪田一男教授、栗原俊英特任准教授、鳥居秀成助教、森 紀和子助教と、大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室の西田幸二教授、高静花寄附講座准教授、藤本聡子(博士課程4年)、ロート製薬株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、学際的総合ジャーナル「Journal of Clinical Medicine」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

近年、全世界で近視の有病率が増加し、人類の3分の1が近視といわれている。なかでもアジア諸国における近視の有病率上昇が顕著で、中国では成人の9割以上が近視と報告され、中途失明原因の第2位となっている。日本においても近視は増加の一途をたどっており、近視の程度が強い「強度近視」の有病率は、40歳以上で5%程度と推定されている。近視が進行し強度近視になると、失明の原因である「」になるリスクが急激に高まる。病的近視は以前行われた全国調査では失明原因の第4位と報告されている。このため、強度近視を防ぐ方法、特に近視が進みやすい小児期に有効なアプローチが望まれていた。

近視の主な原因として、目の奥ゆき()が過剰に長くなり、網膜上で焦点が合わなくなるという現象が知られている。研究グループは先行研究において、クチナシ由来の色素成分「クロセチン」が、マウスで近視進行抑制に関連する遺伝子「EGR-1」の発現を高める効果があること、さらに、近視になるよう誘導されたマウスモデルにクロセチンを投与すると、近視の強さを表す「眼軸長の伸長」と「屈折度数の変化」が、有意に抑制されることを世界で初めて確認している。ヒトの目では、主に小児期に眼軸長の伸びが見られ、成長期が終わると眼軸長の伸びが止まるとされているが、過剰に眼軸長が伸長すると、近視が進行する。そこで今回、6~12歳以下の小児にクロセチンを服用させ、近視が進みやすい小児期におけるクロセチンの近視進行抑制効果を検証した。

小児期からの対策で、強度近視への進行を将来的に防ぐ新たな方法の確立を目指す

研究グループは、同意を得られた軽度近視の小児69名を、クロセチン内服群とプラセボ群の2群に無作為に分け、24週間経過観察し、屈折度数および眼軸長の変化量を比較する無作為2重盲検試験を行った。クロセチン群はクロセチン7.5mgを含んだカプセル、対照のプラセボ群はクロセチンを含まないカプセルを1日1カプセル服用。眼軸長は、クロセチン投与後4週、12週、24週で、屈折度数は4週、24週で測定した。その結果、クロセチン群は対照であるプラセボ群に比べ、眼軸長の伸長が14%抑制されるとともに、屈折度数の低下が20%抑制され、近視進行を有意(P<0.05)に抑制する効果があることが確認された。

さらに、クロセチンの脈絡膜への作用を検討。近視になるよう誘導されたマウスモデルにおいて、眼軸長が伸びて近視が強くなると、見え方(屈折)の変化だけでなく、網膜の外側にある脈絡膜が薄くなるという現象(菲薄化)を伴うが、今回小児において、プラセボ群で脈絡膜の菲薄化が見られたのに対し、クロセチン投与群では脈絡膜の変化が有意(P<0.001)に抑制された。つまり、クロセチンが近視を抑制する作用機序の一端に、脈絡膜の保護がある可能性が示された。

今回の結果は、眼軸長が伸長する小児期におけるクロセチンの有効性を確認したもの。研究グループは、「本成果は、クロセチンがヒトでも近視進行を抑制することを示した新しい知見だ。今回、眼軸長が伸長する小児期における有効性を確認できたことから、クロセチン投与は小児期の近視進行を抑制することで、強度近視への進行を将来的に防ぐ新しい方法として、社会的に大きな意義があるものと考えられる」と、述べている。

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