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がん免疫療法の新規ターゲット候補としてCD24を同定-米スタンフォード大

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2019年08月14日 PM12:00

既知の免疫療法が有効でない患者に代替シグナルがあるか

米スタンフォード大学は7月31日、がんの免疫回避に関与する新しいシグナルを発見したと発表した。この研究は、同大医学部のAmira Barkal博士課程大学院生、Irving Weissman教授らによるもの。研究成果は、「Nature」に7月31日付で掲載された。

免疫細胞の一員であるマクロファージは、がん細胞を検出して貪食する。近年、マクロファージの貪食を止めるように指示できる細胞表面タンパク質、いわゆる免疫チェックポイント分子が発見された。この分子は正常細胞にとって必要である一方で、がん細胞が免疫回避に利用することもわかっている。具体的にはこれまでに、がん細胞が免疫系の攻撃から逃れるために、PD-L1やCD47、MHCクラス1複合体のβ2ミクログロブリンサブユニットなどの分子を利用することが示されている。PD-L1またはPD-1を標的とする薬は、既に世界各国で医薬品として承認されている。また、CD47をブロックする抗体(抗CD47抗体)は、現在臨床試験段階にある。

研究グループは今回、抗CD47抗体が有効でない患者に対し、ブロックが有効な代替シグナルがあるのではないかと考え、新たな分子の探索を行った。

-Siglec-10シグナルブロック、トリネガ乳がんにも効果

研究グループはまず、正常細胞に比べてがん細胞で発現の高いタンパク質を探索した。その結果、多くのがん種でCD24が周辺の正常細胞より多く作られていると判明。さらに詳しく調べたところ、がんの周辺に存在するマクロファージは、SIGLEC-10と呼ばれる受容体を介してCD24を感知するとわかった。そこで、シャーレの中で患者由来のがん細胞とマクロファージを共存させ、CD24とSIGLEC-10の相互作用を阻害したところ、マクロファージはがん細胞を貪食し始めた。さらに、マウスにヒトの乳がん細胞を移植し、CD24シグナルをブロックしたところ、マウス体内のマクロファージががん細胞を攻撃するのが確認された。特に、治療が非常に困難な卵巣がんやトリプルネガティブ乳がんも、CD24シグナルブロックが大変効果的だったのは、今回注目すべき発見で、CD24がこれらのがんの急所である可能性があると研究グループは考察している。

もう1つ注目すべき発見として、CD24シグナル伝達がCD47シグナル伝達を補う形で機能している可能性があることが挙げられる。血液がんなどの一部のがんは、CD47シグナルブロックに感受性が高い傾向があるが、CD24シグナルブロックへの感受性は低い傾向にある。一方、卵巣がんなどの他のがんでは、逆にCD24ブロックの感受性が高く、CD47ブロックの感受性が低い傾向がある。つまり、CD47またはCD24のどちらかをブロックすることで、ほとんどのがんに対して免疫による攻撃を受けやすくすることができ、さらに複数の免疫回避分子をブロックすることでがん細胞をより脆弱にできる可能性が高まるという。研究グループは、「おそらく、大小さまざまな免疫回避シグナルがある中で、CD24は大きなシグナルの1つだろう。CD24シグナル伝達をブロックする治療法が、抗CD47治療法と同じように、まずは前臨床試験で安全性が確認され、次にヒトを対象に臨床試験が行われることを期待している」と、述べている。

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