尿路結石の再発率、5年で50~60%
名古屋市立大学は8月7日、腎臓内の尿細管細胞において、有害因子を選択的に隔離・排除する生態防御機構であるオートファジーの低下が尿路結石形成を促進することを発見したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科腎・泌尿器科学分野の安井孝周教授と海野怜研究員と、長崎大学原爆後障害医療研究所幹細胞生物学研究分野の川端剛助教らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Autophagy」に掲載された。
尿路結石は、腎臓内で形成されて下降することで尿管が詰まり、激痛を引き起こす疾患。放置をすると腎不全や尿路感染を引き起こし、命に関わることもある。尿路結石の再発率は5年で50~60%であり、新たな予防薬や再発リスク法の開発が重要な課題だ。これまでの尿路結石のリスク評価は、尿中のカルシウムなどを測定する生化学検査が中心であったが、これは必ずしも有効とはいえなかった。
また、尿路結石が自然排石しない場合には、衝撃波や内視鏡で破砕をする手術が行われているが、再発に対しては効果がない。形成機序の解明から細胞レベルの酸化ストレスが、結石の形成を促進することが報告されている。
mTORシグナルが新たな診断マーカーとなる可能性
研究グループは、細胞傷害によりオートファジーの機能が低下し、尿路結石が形成されるという仮説のもと、研究をすすめてきた。今回、基礎研究において、オートファジーの低下が細胞傷害を悪化させ結石形成を促進すること、オートファジーの低下はmTORシグナルの活性化によること、mTORシグナルを阻害する薬剤の投与で、オートファジーが亢進し、細胞傷害の抑制により結石形成が抑制されることを発見したという。
画像はリリースより
今回の研究成果は、オートファジーの活性化による尿路結石の予防につながるだけでなく、mTORシグナルが新たな診断マーカーとなる可能性を示すものだとし、これらのオートファジーのマーカー値と尿路結石のリスクなどの検証を今後行う予定だ、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・名古屋市立大学 プレスリリース