L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取が排便状況に与える影響を調査
株式会社ヤクルト本社は8月7日、群馬県吾妻郡中之条町に在住の高齢者を対象に、乳酸菌ラクトバチルス カゼイ シロタ株(L.カゼイ・シロタ株)を含む乳製品の摂取頻度および日常的な身体活動と便秘リスクとの関係を疫学的に調査し、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の高頻度の摂取と、定期的に運動することが、便秘対策として有効であることを発表した。この研究は、同社と東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利専門副部長らの研究グループによるもの。研究成果は「Frontiers in Microbiology」に掲載されている。
画像はリリースより
L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品は、ヒトでの臨床研究により整腸効果を示すことが報告されている。しかし、日常生活を営む一般住民を対象とした疫学調査においては、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取が排便状況に与える影響は十分に検討されていなかった。
便秘は高齢者で増加することが報告されているが、生活の質を低下させるだけでなく、腸内菌叢が乱れて腸内腐敗産物の産生が高まることで、大腸がん発症のリスクを高めることも懸念されている。便秘の改善には、食生活や身体活動など、生活習慣の見直しが効果的と言われていることから、今回、中之条町に在住の高齢者を対象として、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度および身体活動量と便秘リスクとの関係を検証した。
乳製品の摂取頻度が高く1日7,000歩以上の群では便秘リスクが低いと判明
中之条町に在住の高齢者338名(男性140名、女性198名)を対象に、糞便細菌叢、採便前1か月間のL.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度、身体活動量および採便前1週間の排便頻度を調べ、排便頻度が「週3日以下」の人を便秘者と定義した。L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度をもとに、週0~2日群(204人)、週3~5日群(54人)、週6~7日群(80人)の3群に分けたところ、各群の便秘者の割合はそれぞれ14.2%、9.3%、8.8%だった。便秘に関与するとされる年齢、性別、体格指数(BMI)、喫煙および飲酒の影響を調整した統計解析を行うと、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度が高いほど便秘リスク(オッズ比)は低くなることが認められた。週0~2日群の便秘リスクを1としたときの週6~7日群のリスクは0.382であり、有意に低い値を示した。
解析対象者338人のおおよその平均歩数である1日7,000歩で群分けを行ったところ、7,000歩以上群(151人)の便秘者の割合は6.6%であり、7,000歩未満群(187人)の16.6%と比較して有意に低い値だった。また、年齢、性別、BMI、喫煙および飲酒習慣の影響を調整した統計解析の結果、7,000歩未満群の便秘リスク(オッズ比)を1としたとき、7,000歩以上群のオッズ比は0.441であり、有意に低い値を示した。同様に、息が上がるくらいの運動である中強度活動の実施時間が1日に15分未満の群(188人)の便秘リスク(オッズ比)を1としたとき、15分以上群(150人)のオッズ比は0.412であり、有意に低い値を示した。一方、糞便中の各種細菌の菌数に群間差は認められず、1日7,000歩以上群および中強度活動時間15分以上群において便秘リスクが低いことは、腸内菌叢の変化とは別の要因が関与する可能性が考えられた。
次に、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度と身体活動量(1日7,000歩未満および7,000歩以上)の組み合わせと便秘リスク解析対象者338人を、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品摂取頻度(週0~2日、週3~5日および週6~7日)と身体活動量(1日7,000歩未満および7,000歩以上)を組み合わせた6群に分け、年齢、性別、BMI、喫煙および飲酒習慣影響を調整した統計解析を行い、便秘リスク(オッズ比)を比較した。その結果、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度が高く、1日7,000歩以上の群では、便秘リスクが低い値を示した。さらに、これらの群とL.カゼイ・シロタ株を含む乳製品を週0~2日摂取かつ1日7,000歩未満群を比較したところ、乳製品を週0~2日摂取かつ1日7,000歩未満群のオッズを1とした場合、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品を週6~7日摂取かつ1日7,000歩以上群のオッズ比は0.121となり、有意に低い値を示した。
引き続き、高血圧発症リスクや便秘リスク低減以外の可能性を追求
今回の研究成果から、中之条町の高齢者では、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品摂取頻度が高いほど、腸内の乳酸桿菌およびラクトバチルス カゼイ サブグループの菌数が多く、便秘リスクも低いことが明らかになった。また、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取と身体活動は異なるメカニズムを介して排便状況を改善し、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取と身体活動をあわせて行うと、より便秘リスクが低下する可能性も示された。
研究グループは「これまでの中之条町における調査にて得られた、L.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の習慣的摂取による高血圧発症リスクの低減、今回の知見に引き続き、今後もL.カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取による新たな可能性を追究していく」と、述べている。
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