世界13地域、約1万人分の血圧の情報を解析
帝京大学は8月7日、自動血圧計を用いて測定された24時間と夜間の血圧値の組み合わせにより、脳心血管病発症リスクの高精度の予測が可能であることを明らかにした研究結果を発表した。この研究は、同大医学部衛生学公衆衛生学講座の大久保孝義主任教授と浅山敬准教授が参画している国際共同研究IDACO(the International Database on Ambulatory Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcome)により行われたもの。研究成果は、米国医師会雑誌「Journal of the American Medical Association(JAMA)」電子版に掲載された。
画像はリリースより
高血圧は脳心血管病の最大の危険因子のひとつで、生活習慣の改善や降圧治療によって改善を図ることができる。しかし、血圧値は変動しやすく正確な診断が困難であることから、将来の脳心血管病発症リスクを正確に予測する血圧測定についての研究が進められてきていた。
IDACOはベルギーのLeuven大学により運営管理されている国際共同研究プロジェクト。日本からは岩手県花巻市で1986年より実施されている大迫研究(帝京大学、東北血圧管理協会などの研究機関と地元自治体との共同研究事業)が参画している。今回研究グループは、IDACOに登録された世界13地域・3大陸(東アジア、ヨーロッパ、南アメリカ)の一般地域住民1万1,135人における、24時間自由行動下血圧ならびに関連医療情報を解析した。
診察室外の血圧測定に基づく高血圧管理が予防策に
平均14年間の追跡期間中に2,836例の脳心血管病の発症(死亡を含む)が認められたという。追跡開始時に測定された診察室血圧、昼間自由行動下血圧、夜間自由行動下血圧、そして24時間自由行動下血圧と脳心血管病発症との関連を、各種危険因子で調整して解析したところ、24時間ならびに夜間の自由行動下血圧が高値である場合、脳心血管病に最も高率に罹患することが判明。24時間と夜間の自由行動下血圧値の組み合わせによって、10年間の脳心血管病発症リスクを明瞭に示したという。
日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(JSH 2019)でも、高血圧の診断根拠として家庭血圧を診察室血圧よりも優先するよう定めるなど、家庭血圧に基づいた高血圧の診断・治療を推奨。「診察室外での多様な血圧測定に基づく高血圧の管理が脳心血管病の予防に重要だ」と、研究グループは述べている。
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・帝京大学 プレスリリース