国内患者数1,156人の血友病B
田辺三菱製薬株式会社と自治医科大学は8月6日、国内で血友病Bに対する遺伝子治療用医薬品(遺伝子治療用製品)の研究開発に着手すると発表した。これは、田辺三菱製薬を代表機関として日本医療研究開発機構(AMED)の平成30年度「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」に応募した研究開発課題「血友病Bに対する遺伝子治療用製品の研究開発」が2018年10月に採択されたことを受けたもので、田辺三菱製薬は2019年8月、AMEDと委託研究開発契約を締結した。
血友病は、血液凝固因子の遺伝子異常による先天性疾患。出血した際に血を固めるための血液凝固因子が生まれつき不足または欠乏しているため、けがや打撲などで出血すると、 止血までに時間がかかり、重篤な出血に至る場合もある。血友病は、血液凝固因子のうち、低下・欠乏しているものが第VIII因子の場合「血友病A」、第IX因子の場合「血友病B」となる。2018年5月31日時点で報告された国内の血友病患者数は8,751人。そのうち、血友病Aの患者数は5,301人、血友病Bの患者数は1,156人と報告されている(血液凝固異常症全国調査 平成30年度報告書より)。
AAVベクターを用い、体内に正常な凝固因子を発現
今回研究開発が開始される遺伝子治療は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを血友病Bの患者に投与し、血液凝固第IX因子を産生する遺伝子を患者の細胞に取り込ませることで体内に正常な凝固因子を発現させるというもの。この治療方法が確立すると、患者は1回の遺伝子治療用製品の投与によって、定期的な第IX因子の補充療法からの離脱が期待できる。
今後、AMEDの支援のもと、田辺三菱製薬と自治医科大学は共同で血友病Bに対する遺伝子治療用製品の創製に向けた研究開発を進めていく予定。さらに、今回の研究開発で得られた遺伝子治療技術を活用し、将来的には遺伝子異常が原因となる他の疾患への拡大展開を目指すとしている。
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・田辺三菱製薬株式会社 ニュースリリース