■薬局のあるべきサービスも検討
厚生労働省医薬・生活衛生局の樽見英樹局長は2日、就任後初めて専門紙の共同会見に応じ、継続審議となっている医薬品医療機器等法改正案を最大の課題に位置づけ、「早期の成立に力を尽くしたい」と語った。医薬分業については、「ポリファーマシー解消、処方カスケードの防止、患者にとって薬をもらいやすい環境を整えるというアプローチも含めれば、まだ伸ばせる」と強調。一方で、超高齢化社会を目前に控え、健康寿命の延伸と医療費抑制の両立が求められる中、「薬局で提供しているサービスや情報がどうあるべきかについて考えていく必要がある」との考えも示した。
樽見氏は、薬機法改正案について、「先の通常国会でなかなか正面から議論する時間がいただけなかった」としつつも、「内容的にここが問題だという議論にはなっていない」との認識を示した。
その上で、「法案の意義、重要性を分かりやすく伝えていくことが重要」とし、「法案を早期に成立させることによって、患者さんにこれだけのメリットがあるということを分かりやすく丁寧に説明することに努力したい」と語った。
法案成立に向けては、今秋に予定されている臨時国会が通常のスケジュール通りに開かれれば、「十分可能だと思っている」との認識を示した。
また、高齢患者が増える中で、ポリファーマシーの解消や、薬の副作用や相互作用を新たな疾患と誤認してさらなる薬の処方が繰り返される「処方カスケード」の防止、服薬アドヒアランス向上の重要性を指摘。「医薬分業をきちんと進めていくというのは、非常に重要な手段」と語った。
薬局については、「単に物を売っているのではなく、サービスや情報を提供している」との認識を示し、超高齢化社会の到来で「医療費を抑制しながら、国民の健康水準を上げていくことが求められる状況で、OTC薬の販売なども含め、薬局で提供しているサービスや情報がどうあるべきかについて考えていく必要がある」と語った。
医療用医薬品のスイッチOTC化については「ニーズに応えるべき」としつつも、「販売体制の整備とセットでやらなければならない」と指摘。一般薬と言えども、スイッチ化を急速に進めることで安全面が覆い隠されてしまうことを危惧し、「丁寧に検討していくことが必要」との認識を示した。
製薬業界との関係については、「保険局長になって接する機会が増えた」とし、当時は脊髄損傷の治療に用いる再生医療等製品「ステミラック注」、CAR-T細胞療法「キムリア点滴静注」などの高額薬剤が相次いで薬価収載されたこともあり、「保険局長として新しい薬が出てくるのはいいが、高すぎるのはどうしたものか考えさせられた」と吐露。今回、医薬・生活衛生局長に就任したことで、「より同じ方向を向いて仕事ができる局面が増えるのではないか」と語った。
さらに、世界同時開発や早期の国際共同治験、海外で承認申請を行うケースが増えるなど、国際化が進んでいる状況を踏まえ、「世の中の変化に遅れないよう、着実に柔軟に対応できる規制のあり方を考える必要がある」と指摘。「企業にとっての予見可能性の障害にならないよう、どういうデータを揃え、どう手続きを進めれば迅速な承認審査に結びついていくのか、企業に早い段階で分かってもらうようにすることが大事」とした。