厚生科学審議会予防接種基本方針部会のワクチン評価に関する小委員会は7月31日、ロタウイルスワクチンの定期接種化について、接種にかかる費用を低減すべきと結論づけた。接種者が負担するコストが非接種者を上回る現状に対して、現在の費用で定期接種化するには課題が残ると判断。ただ、接種による利益が副反応のリスクを大きく上回ると評価し、定期接種化については部会で引き続き検討する。厚生労働省は、近日中にワクチンの製造販売業者2社に費用面での対応を聴取した上で、部会に報告する方針。
ロタウイルスは0~6歳の乳幼児期が罹患しやすく、下痢、嘔吐、発熱などを発症し、脱水の悪化でショックや死亡に至る事例も見られる。予防策として、国内ではグラクソ・スミスクラインの「ロタリックス」とMSDの「ロタテック」のワクチン2種類を任意で接種できる。
旧予防接種部会では、2012年からこれらワクチンを予防接種法の対象として定期接種化するかどうかの検討を開始。小委員会では、ワクチン接種によるリスクと利益の比較、接種にかかる費用対効果などを集中的に検討し、議論内容を取りまとめた。
具体的には、ワクチンの副反応である腸重積症とワクチンで予防されるロタウイルス胃腸炎による入院例を比べた結果、ワクチン導入後に外来患者や入院患者が減少したデータが多数報告されていること、腸重積症が1件発生する間に入院例が480件予防されているとの推計を示した研究結果などを踏まえ、接種による利益がリスクを大きく上回ると判断。定期接種化は問題ないとした。
一方で、費用対効果の面では、ワクチン接種者が支払うコストが非接種者よりも高く、ワクチン価格が少なくとも4000円ほど低下すれば、接種者の方が安価なコストになることなどから、「費用対効果が良好でない」と評価。接種にかかる現状の費用で定期接種化するには課題が残るとの考えを示した。
これら検討結果から、小委員会は、定期接種化には「接種にかかる費用を低減することが必要」とした上で、定期接種化については、引き続き部会で審議することが妥当と結論づけた。
小委員会の結論を受け、厚労省は、ワクチン接種にかかる費用面での対応を製造販売業者に文書で尋ね、回答を部会に報告して議論する考えを示した。