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国内治験で健康成人が死亡-エーザイの抗てんかん薬

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2019年08月02日 AM10:30


エーザイは7月30日、健康成人を対象とした抗てんかん薬「E2082」の国内第I相試験で、1人の男性被験者が治験薬投与完了後に死亡したと発表した。薬剤との因果関係は現段階では不明。エーザイは国内第I相試験、米国で実施していた第II相試験を中断し、厚生労働省が調査を進めている。厚労省によると、2013年以降に実施された国内治験で健康成人の被験者が死亡する事例は初めて。他の被験者で重篤な副作用は報告されていないことから、臨床薬理試験の専門家は「現時点では情報が不足しており、判断は難しい」とした上で、「試験計画に問題があったとは言いづらい」との見解を示している。

「E2082」は、エーザイが創製し、国内で販売中の抗てんかん薬のAMPA受容体拮抗薬「」(国内製品名:)の次世代製剤で、てんかん発作時に多く発現するAMPA受容体に結合し、発作を抑える薬理作用を持つ。17年11月から国内で日本人と白人の健康成人118人を対象とした第I相試験を開始。米国では昨年10月から少数のてんかん患者を対象とした第II相試験を実施している。

国内第I相試験は、単回投与試験と反復投与試験の二つのパートで構成され、E2082の安全性や忍容性、薬物動態を評価した。男性成人の被験者は、1日1回10日投与を行う反復投与試験での投与完了後、6月25日に死亡し、26日に医療機関からエーザイに連絡が入ったという。エーザイは26日に、日本と米国で実施している二つの試験を中断し、7月3日に厚労省に報告。現在、厚労省が原因究明に向けた調査を進めている。他の被験者で重篤な副作用は報告されていない。

エーザイの岡田安史COOは、7月31日に都内で開催した決算説明会で、「被験者が亡くなったことを極めて重く受け止め、引き続き安全性に十分に配慮し、高い倫理観を持って医薬品の研究開発を行っていく。厚労省の調査に積極的に協力する」と語った。

一方、厚労省は、治験がGCPに則って正しく行われていたかなどについて調査を進めている段階。「現時点では何も言えない。調査結果が明らかになり次第、適切な対応を行いたい」とコメントしている。

■極めて稀な事象-薬理作用以外が原因か

厚労省によると、国内治験で健康成人被験者が死亡したのは、13年以降の有害事象報告で初の事例となる。臨床試験受託事業協会が1993年から集めた20万例に及ぶ有害事象調査でも、死亡例は報告されておらず、極めて稀な事象と言える。

海外では、16年1月に仏レンヌ病院での脂肪酸アミド加水分解酵素阻害剤「BIA10-2474」のファースト・イン・ヒューマン(FIH:ヒト初回投与)試験で被験者が死亡している。抗CD28抗体「TGN1412」の英国第I相試験でも06年に実薬を静脈内投与された6例全例にサイトカインストームによる多臓器不全が生じ、死亡例は出ていないものの4人が重症、2人が重体となった。

ただ、E2082の第I相試験は、他の被験者では重篤な副作用が報告されていないため、海外事例とは状況が異なるとの見方もある。臨床薬理試験の専門家は、「現段階で薬剤との因果関係があったか判断を下すのは難しい」とした上で、「ペランパネルとほぼ同じ第I相試験のデザインとなっており、FIH試験の用量漸増設定にも問題があるようには見えない」と分析する。

さらに、E2082と類似した薬理作用を持つペランパネルについて、「審査報告書では中枢系の有害反応、うつ、自殺のリスク、脂質代謝、肥満のリスクなどが懸念されていることがうかがえるが、他剤と比較して特に高いものではない」と指摘。治験薬投与終了後に死亡した状況を踏まえ、「E2082による直接の薬理作用が原因ではない可能性がある」とし、「情報不足で断言は避けたいが、現段階では試験計画に問題があったとは言いづらい」との見解を示している。

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