早期食道がん、自覚症状がないことが多い
国立がん研究センターは7月11日、高い精度(感度96%、特異度98%)で食道がんを血液から検出する診断モデルの作成に成功したと発表した。同研究は、国立がん研究センターと、同センター中央病院、国立長寿医療研究センター、東レ株式会社、株式会社ダイナコムら共同研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「JAMA Network Open」に掲載された。
画像はリリースより
食道がんは予後不良ながんで、転移性の腫瘍では根治は難しく、局所のみの病変で見つかっても、腫瘍の進行によっては手術や放射線治療といった局所治療と薬物治療を組み合わせた比較的負担が大きい治療が必要となる。一方、早い段階で診断された食道がんは内視鏡を用いた負担の少ない治療での治癒を目指すことができるが、早期には自覚症状がないことが多いため、簡便で有用かつ早期診断が可能な診断マーカーの開発が急務の課題だ。同研究グループは、食道がん(扁平上皮がん)に特異的なバイオマーカーを同定することを目指し研究を行った。
ステージⅠ患者群、95%の感度で陽性診断
今回の研究では、食道がん566例と、がんを有さない4,965例の計5,531例全例の血液(血清)中マイクロRNAを網羅的に解析し、食道がん患者で有意に変化する多くのマイクロRNAを同定。それらの組み合わせを利用した統計的解析により食道がん患者を特異的に判別できる判別式(診断モデル)を作成した。解析対象例を探索群と検証群に分け、その精度を検証した結果、同モデルは検証群の食道がん患者全体の96%を正しくがんであると判別することができ、診断精度の極めて高い(感度96%、特異度98%)診断モデルの作成に成功したことを確認した。ステージ別の検証においては、ステージ0、ステージⅠ、ステージII、ステージIII、ステージIVの患者群それぞれを89%、95%、98%、97%、100%の感度で陽性と診断できたことがわかった。
同研究により作成された診断モデルは、極めて高い診断精度であり、かつその精度を血液からの情報のみで実現できたことは大変意義の大きい成果だと研究グループは述べている。今後、実際の患者で確認する前向きの臨床研究で検証および最適化を重ねることで、食道がんスクリーニング検査確立の実現に向けた大きな前進が期待されるとしている。
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・国立がん研究センター プレスリリース