■原薬複数ソース化を推進
日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の澤井光郎会長は、薬事日報のインタビューに応じ、原薬調達の問題で一部後発品で品切れが発生した事態を受け、安定供給への対応を重要課題に位置づけた。会員企業が複数の製造所から原薬を調達する「原薬複数ソース化比率」の引き上げを目指すと共に、日本製薬団体連合会が作成した原薬の安定調達確保に関するチェックリストなどを活用し、会員企業の自己点検を実施する。澤井氏は、欠品リスクが認められる場合は、早期に行政に相談するなど適切な対応を取るとし、「原薬の出発物質から最終製品までサプライチェーンを点検し、医療機関への安定供給に支障を来さない体制を構築したい」と語った。
海外の原薬に依存する医薬品は多いが、後発品でも供給不安が起こっている。日医工が販売するセファゾリンナトリウム注射剤では、原薬出発物質を製造する中国メーカーによる供給停止と、イタリア原薬メーカーの製造工程で不純物が混入し、供給が停止した。
澤井氏は、「安定供給に支障を来す事例が発生しており、医療関係者に迷惑をかけている。対策をしっかりやっていかなくてはならない」と述べ、「安定供給を守るためには、原薬の複数ソース化が必須」と強調した。
厚生労働省による「後発品使用促進ロードマップ検証検討事業」では、原薬の複数ソース化ができている後発品の品目数割合は、2017年度で42.7%と、直近4年間で約14ポイント改善した。
GE薬協の加盟企業だけで見ると、それよりも1~2%高く、後発品専業大手では60%程度のところもあるなど、各社の取り組みは進んできているが、「各社でより高いレベルまでスピード感を持って取り組んでいくことが重要」との認識を示す。
原薬の複数ソース化を推進すると同時に、安定供給体制を点検する仕組みも整えていく。日薬連は、今月5日に加盟団体に対し、医療用医薬品の安定供給に関する通知を発出。医療用医薬品を製造する企業において、原薬調達で確認すべきリスク項目を列挙したチェックリストを作成し、自己点検を要請した。
チェックリストでは、原薬製造業者の製造能力をはじめとする原薬の安定調達確保に関する項目、原薬が使用される医薬品で適応疾患の重篤度など医療上の必要性に関する項目について確認し、欠品リスクが解消できない場合には早期に行政へ相談するなど、適切な対応を行うとしている。
既にGE薬協では、会員企業に日薬連のチェックリストを周知しており、欠品を引き起こさない仕組みや、万が一供給不安が発生しても、代替品供給など対応が取れるようにしていく。澤井氏は、「原薬複数ソース化に向けては、ダブルソースだけではなく、トリプルソースで対応する品目もある」と説明する。
その上で、「原薬の出発物質から中間体、最終製品までには長い工程を要するため、原薬を調達する上では、調達先のサプライチェーンを注意深く見ないといけない」と述べ、チェックリストでは想定していないリスク項目があれば新たに追加し、対応を図っていきたい考えだ。
一方、来年4月の次期薬価制度改革に向け、後発品については初収載薬価の現状維持を要望している。初収載薬価は、先発品の0.5がけ、10銘柄以上収載された内用薬の場合は0.4がけとなっているが、「後発品メーカーが多くの低薬価品の安定供給を行っていく観点で考えると、これ以上引き下げるべきではない」と訴えた。
既収載品については、発売後12年が経過した後発品薬価の1価格帯への集約について言及。「市場実勢価格の安い製品の薬価が引き上げられたり、逆に高い製品の薬価がその影響で著しく引き下げられるなど、市場実勢価格と改定薬価に乖離が生じている。収載から12年経過した後発品の1価格帯への集約化では、多くの品目でこのような状況が起こると予測される」と懸念を示す。
その上で、医療安全のための工夫や患者のQOL改善などに貢献している医薬品を長期的に供給していくためには、「同一価格帯の中で、改定後薬価が改定前薬価を超える品目は別価格とするなど、市場での評価が適切に反映される制度とすべき」と提案した。