NLRP3インフラマソームの誤嚥性肺臓炎における役割を研究
自治医科大学は7月26日、マクロファージを強酸刺激することで誘導される、インフラマソーム非依存的なIL-1βプロセシングの新規メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大内科学部門呼吸器内科学講座の水品佳子助教、分子病態治療研究センター 炎症・免疫研究部の唐澤直義助教、高橋将文教授、薬理学講座臨床薬理学部門の相澤健一准教授らの研究チームによるもの。研究成果は「The Journal of Immunology」に掲載されている。
胃酸の誤嚥によって生じる誤嚥性肺臓炎では、急性肺傷害を発症するが、そのメカニズムは不明な点が多く、有効な治療方法も確立していない。そこで無菌性炎症の惹起経路として注目されているNLRP3インフラマソーム(NLRP3とアダプター分子ASC、caspase-1から構成される細胞内分子複合体)の誤嚥性肺臓炎における役割を解明する目的で、マウス誤嚥性肺臓炎モデルを用いて解析を行った。
強力な炎症性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)は、IL-1β前駆体が成熟型IL-1βへとプロセシングされることで炎症を惹起する。代表的なIL-1β変換酵素はcaspase-1で、その活性はインフラマソームにより制御されている。
インフラマソームとは別のメカニズムであることが判明
塩酸気管内投与によるマウス誤嚥性肺臓炎モデルでは、マウスは急性肺傷害を発症する。IL-1β欠損マウスと野生型マウスとで、その炎症反応を比較したところ、IL-1β欠損マウスで有意に軽減していた。一方、NLRP3欠損マウスでは、炎症反応に有意差を認めなかった。これらの結果から、NLRP3インフラマソーム非依存性に産生されるIL-1βの重要性が示唆された。
胃酸を誤嚥した場合、肺胞内に常在するマクロファージが強酸に暴露されることから、in vitroでマクロファージを強酸刺激したところ、caspase-1によるプロセシングとは異なる分子量の成熟型IL-1βを検出した。検出した成熟型IL-1βのLC-MS/MS分析により、強酸刺激によるIL-1β産生は、これまで知られていない新規部位(D109)でプロセシングを受けて産生されること(分子量18.2-kDa)が明らかになった。
今回の発見は、インフラマソーム非依存的なIL-1βプロセシングの新規メカニズムであり、「本研究成果は、誤嚥性肺臓炎や急性肺傷害の新規治療法開発への応用が期待される」と、研究グループは述べている。
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