■医療系総合大の強み生かす
大阪薬科大学と大阪医科大学は2021年4月に統合し、「大阪医科薬科大学」(仮称)として新たに出発する計画だ。両大学の学校法人は16年に統合。5年後の大学統合を視野に検討を重ね、今年3月に正式に決定した。これまでも両大学は協調して多職種連携教育(IPE)を実践してきたが、医学、薬学、看護の3学部が同じ大学に所属することで、今まで以上に連携教育を推進しやすくなる。18歳人口の急減が見込まれる中、小回りの利く医療系総合大学として質の高い教育を展開し、勝ち残りを図る。
来春をメドに、大阪医大に薬学部を新設する設置認可を文部科学省に申請する。新設する薬学部は、大阪薬大の教育課程、学費、奨学金制度、教員組織、学生支援体制、キャンパスなどの全てを承継する。薬学部設置認可後、大学名変更を届け出る計画だ。
学生数は、大阪医大が約1000人、大阪薬大が約1900人。大学統合後も、直線距離で約5km離れた両大学のキャンパスや校舎などハード面は当分の間は現状のまま運用し、ソフト面での連携を推進する。教育、研究、大学院、国際交流、入試、規則など各分野のワーキンググループを設置して、約1年前から具体的な検討を進めており、全ての領域をすり合わせて同じ大学として統合する。
大阪薬大の政田幹夫学長は「小回りの利く医療系総合大学として、より一層連携が進む」と期待を語る。統合後は、大学間の連携ではなく、同じ大学の学部間で連携する形になる。同じ組織になるため、カリキュラム編成や教員の活用、共同研究など、様々な面で連携を推進しやすくなる。
また、医学部や看護学部の教員にも講義や実習を依頼でき、「実務実習で学ぶ必要がある8疾患についても事前にしっかり教育を行えるようになる」という。
医学、薬学、看護の3学部によるIPEも拡充する。学校法人の統合以降、IPEは段階的に始まっており、高知県に出向いて地域医療における多職種連携を学ぶ実習(薬学5年次)や、医療安全や倫理的判断について討議しチーム医療の理解を深める医薬看融合ゼミ(薬学6年次)を約3年前から開始。
グループで協働して問題解決に取り組みチーム医療に必要な実践力を身に付ける医療人マインド教育(薬学1年次)は昨年から、各専門職の役割やチーム連携の必要性を学ぶ医薬看3学部合同多職種連携医療論(薬学2年次)は今年から開始した。
今後は、医療現場に出向き実症例の課題解決を3学部の学生が討議する臨床実習など、様々なIPEを実施する。臨床実習には、実務実習を終えた薬学5年次の学生が参加する見込みで、政田氏は「臨場感のある実践的な教育を行える」と期待している。
こうした教育を通じて、チーム医療における役割を十分に理解し、社会で実践できる薬剤師を養成していく。政田氏は「医師は効果を重視して薬物療法を考える傾向が強い。薬剤師が安全性に目を向けて薬物療法に関わることで、適正な薬物療法が実現する。医師は専門分化しているため、専門外の薬物療法を薬剤師が支援することも重要。連携の必要性を学び、医療現場で実践してほしい」と話している。
医療系総合大学になることで、医師や看護師との実践的なコミュニケーションや、医療人としての基本的な生命倫理観などを養う教育も充実させる。
18歳人口の急減が見込まれる中、薬系大学の数が増え、大学間競争は激化している。医療系総合大学として教育や研究の充実を図り、質の高い学生を集めて競争を勝ち抜きたい考え。