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多数の細胞を高速で多色画像化する新技術を開発、がん細胞や血液などを分類-東大ら

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2019年07月24日 PM12:00

4つの分子振動周波数におけるSRS信号を高速に取得

東京大学は7月22日、細胞内生体分子を光学的に検出する誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering:SRS)顕微法において、高速波長切り替えの可能なレーザー光源を適用することで、4つの分子振動周波数におけるSRS信号を高速に取得する技術を開発したと発表した。この研究は、同大大学院工学系研究科電気系工学専攻の小関泰之准教授、鈴木祐太元学振特別研究員、小林航也元修士課程学生、同大学院理学系研究科化学専攻の合田圭介教授、脇坂佳史元博士課程学生らが、、科学技術振興機構、、がん研究所、筑波大学、、台湾国立交通大学と共同で行ったもの。研究成果は、米国科学アカデミー紀要「PNAS」オンライン版に7月19日付で公開された。

多数の多様な細胞一つひとつの化学的・形態的特徴を計測するための技術として、流体中の細胞を高速撮像するイメージング・フローサイトメトリーが注目されている。しかし、イメージング・フローサイトメトリーは生体分子を識別するために蛍光標識を必要とし、蛍光標識に伴う細胞毒性や、標識の困難な生体分子の存在などの課題があった。

細胞を蛍光標識せず、細胞内分子を光学的に検出することで、細胞の化学的・形態的情報を得る手法として、SRS顕微法が知られている。しかし、SRS顕微法は単一周波数における分子振動情報を得る上では高速であるものの、複数の分子を検出するためにはレーザーの波長を切り替える必要がある。その間に細胞が動いてしまうと計測ができないため、SRS顕微法をイメージング・フローサイトメトリーへ適用することは困難だった。また、流体中の細胞に対して、複数周波数における分子振動を計測する技術も複数の研究グループから報告されているが、細胞中の1点での計測にとどまっており、形態的特徴を画像情報として得ることはできていなかった。


画像はリリースより

最高毎秒140細胞のスループットで多数の細胞の無標識計測に成功

今回の研究では、研究グループが開発してきたSRS顕微法を、高速性を保ちつつ多色化することで、細胞内の生体分子の複数周波数の分子振動を直接光で計測して画像化する、SRSイメージング・フローサイトメトリーを開発。高速波長切り替えの可能なレーザー光源を適用することで、4つの分子振動周波数におけるSRS信号を高速に取得することに成功した。

また、この技術をマイクロ流体チップによる細胞位置制御技術と組み合わせることにより、1秒あたり最高140細胞の多色SRS画像を取得し、数千~数万個の細胞内に含まれる脂質や多糖類などを蛍光標識せずに画像化する技術の開発に成功した。同技術によって多数の細胞の分子振動画像をビッグデータとして取得することが可能になるとともに、人工知能の一種である深層学習を用いることで、微細藻類細胞、血液細胞、がん細胞の多色SRS画像を解析し、分類が可能であることを実証した。

今回開発された細胞計測手法は、細胞による物質生産による生産性評価、再生医療用の細胞の品質管理、がん細胞の研究などへの応用が考えられる。がん研究では、「従来のがん細胞マーカーによる計測に加えて、同手法を用いてがん細胞を計測することで、細胞内部の脂質の不飽和度や代謝活動など、分子振動を検出することで初めて得られる生体分子情報の計測が可能となり、がん細胞に関する知見が深められることが期待される」と、研究グループは述べている。

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