全ての抗癌剤の投与時に閉鎖式薬物移送システム(CSTD)を使用する病院は今後増加するとの見通しが、18日から3日間、京都市内で開かれた日本臨床腫瘍学会学術集会で示された。関連3学会が2月に発刊した職業性曝露対策ガイドラインの2019年版では初めて投与時におけるCSTDの使用が推奨された。12月に施行予定で、法的拘束力を持つ米国の基準「USP800」においても、CSTDの使用義務が明記されている。これらの指針や基準が今後、投与時の使用を後押しすることになるという。
抗癌剤など曝露による健康被害を起こす可能性のある「ハザーダス・ドラッグ」(HD)への対策が世界的に進んでいる。日本がん看護学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床腫瘍薬学会は15年に、3学会合同で「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン15年版」を出版。2月には内容を改定し19年版を発刊した。15年版では、CSTD使用の推奨はHD調製時のみにとどまっていたが、19年版には「HD静脈内投与時のルートにCSTDを使用することを強く推奨する」との文言が盛り込まれ、推奨範囲が広がった。
策定に関わった高橋雅信氏(東北大学加齢医学研究所臨床腫瘍学分野)は「HD投与時のCSTD使用の有無による医療従事者の健康被害を比較したエビデンスレベルの高い研究はないが、観察研究などの結果によって、少なくともCSTDを使わないよりは使った方がいいだろうということで、強い推奨となっている」と報告。法的拘束力を持つUSP800にも「HDの投与管理において形状が合う場合にはCSTDの使用が必須」との記載があり、「海外の基準も重視した」と語った。
高橋氏らがガイドライン作成委員の施設を対象に、HD投与時のCSTD使用範囲を聞いたところ、19年版発刊前は7割の施設が「揮発性の高い3薬剤」、3割の施設が「全薬剤」に使用すると回答していたが、発刊後は7割以上の施設が「全薬剤に使用または使用を検討」と回答した。
高橋氏は「現在、多くの施設では揮発性の高い3薬剤の投与時にCSTDを使用しているが、いずれは全薬剤に使用する方向になるだろう」と言及。現在、投与時のCSTD使用には診療報酬が設定されていないため、「この課題を解決する必要がある」と訴えた。