タウ伝播種となるMTBRを標的とするよう、特徴的に設計
エーザイ株式会社は7月19日、新規抗タウ抗体E2814の最新データについて、2019年7月14~18日まで米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されたアルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer’s Association International Conference: AAIC)2019において発表したと報告した。
E2814は抗タウ・モノクローナル抗体。アルツハイマー病(AD)を含むタウオパチーに対する疾患修飾薬として開発され、臨床第1相試験の準備中。同臨床候補品は、タウ伝播種の脳内拡散を抑制する抗体として設計され、エーザイとユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとの共同研究を通じて見出された。
タウタンパク質が凝集し線維化する神経原線維変化は、ADの病理学的特徴のひとつ。タウ病変の拡散には、タウタンパク質が生体内で分解された微小管結合領域(MTBR)を含むフラグメントがタウ伝播種となり、脳内の異なる部位にタウ病変を拡散していくことが知られている。E2814は、このタウ伝播種となるMTBRを標的とするよう特徴的に設計されており、神経原線維変化のさらなる脳内蓄積を防ぎ、病気の進行を抑制することが期待される。
MTBRを含むフラグメントの定量、バイオマーカーとなり得る可能性
研究グループは今回、AD患者における脳脊髄液(CSF)中のMTBRを含むフラグメントの定量化を検討。また、この定量法を用い、臨床試験においてE2814の標的であるMTBRを含むフラグメントへのE2814結合(ターゲットエンゲージメント)の評価法について検討した。
その結果、ヒトCSF中のMTBRを含むフラグメントの定量化が可能であることが確認され、AD患者(64~84歳の白人、MMSE:13-26)では、健康成人(46~75歳の白人)と比較してCSF中のMTBRが顕著に増加していることが確認された(p<0.0001)。さらに、CSF中のMTBRは、総タウ(R2=0.7811)およびリン酸化タウ(R2=0.8849)と良好な相関性を示し、かつ、リン酸化タウとの相関性が総タウとの相関性よりも高かったことから、MBTRがタウ病理の伝播因子である可能性が示唆された。
AD患者のCSFを用いたin vitro実験から、MTBRの大部分がE2814に結合することが確認され、さらにサルを用いたin vivo実験において、CSF中でE2814と結合するMTBRを含むフラグメントがE2814の用量依存的に増加することが確認された。これらの結果から、新規抗タウ抗体であるE2814が細胞外で薬剤標的であるMTBRを含むフラグメントを捕捉し、脳内から除去される可能性が示唆されたとともに、MTBRを含むフラグメントの定量は、臨床試験におけるターゲットエンゲージメントのバイオマーカーとなり得ることが示されたとしている。
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・エーザイ株式会社 ニュースリリース