経皮感作小麦アレルギーのゲノム解析
筑波大学は7月18日、経皮感作小麦アレルギー患者の全ゲノム関連解析を行い、病気のなりやすさ、なりにくさに関わる遺伝子がHLA-DQ領域とRBFOX1領域に存在することを見出し、発症に関連するHLA-DQアレル型を同定したと発表した。この研究は、同大医学医療系の野口恵美子教授、藤田医科大学の松永佳世子教授、矢上晶子教授、理化学研究所の秋山雅人リサーチアソシエイト(研究当時)、玉利真由美チームリーダー(研究当時)、国立成育医療研究センター研究所の斎藤博久所長補佐らの国内多施設共同研究によるグループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に7月10日付でオンライン公開された。
画像はリリースより
アレルギー疾患は多因子疾患であり、遺伝(体質)と環境の両方が関わって発症する。アトピー性皮膚炎など、皮膚のバリア障害がある場合には、食物アレルギーの発症リスクが高まることが知られており、皮膚からアレルギー物質(アレルゲン)が入る「経皮感作」のメカニズムが注目されている。
食べ物として口から摂取する小麦は、化粧品などの直接肌に触れる成分にも、加水分解コムギとして含まれている。日本国内では、加水分解コムギを含むせっけんを使用した後に、パン、パスタ、うどんなどの小麦含有食品を食べてじんましんや呼吸困難の症状を起こす症例が2009年に初めて報告された。日本アレルギー学会が、2011年に「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」を設置し、診断基準の策定、検査法の構築とともに、全国規模で症例集積を行った結果、計2,000名以上の加水分解コムギによる経皮感作小麦アレルギーの症例が報告され、社会問題となった。このような多くの経皮感作アレルギー患者数は、世界的に見ても過去に報告がない。そこで今回研究グループは、この経皮感作小麦アレルギーと関連する遺伝要因の解明のための研究を行った。
発症に関連するHLA-DQアレル型を同定
研究グループはまず、全国のアレルギー疾患を診療する医師の協力のもと、525例の経皮感作小麦アレルギー患者と日本人一般集団3,244名から得られた遺伝子型情報を使用して、全ゲノム関連解析と、確認のための追認解析を実施。その結果、6番染色体のHLA-DQ領域と16番染色体のRBFOX1領域に、関連を示す領域を同定した。さらに、HLA領域についてはなりやすいHLAアレル型としてHLA*DQB1*03:02とDQB1*03:03、なりにくいHLAアレル型としてHLA*DQB1*06:01とDQB1*03:01をそれぞれ同定した。
今回の研究は、小麦アレルギーに対して全ゲノム関連解析を応用した初めての研究成果となった。「今後、今回の研究成果と他の食物によるアレルギーの患者や、経皮感作ではない従来型の小麦アレルギーの患者との比較を行うことにより、食物アレルギーの発症機序の解明や、より良い治療法、発症予測法の開発が期待される」と、研究グループは述べている。
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