薬学教育6年制の新たな実務実習は、▽参加・体験型実習の充実▽病院と薬局が連携した一貫性のある実習――をテーマに2月から始まった。1年間を4期に分け、学生は薬局と病院で計2期の連続した実習を受ける。1期の薬局実習は5月上旬に終了し、現在は2期の薬局、病院実習が行われている。
鈴木匡氏(名古屋市立大学大学院薬学研究科教授)は、東海地区における1期の薬局実習を踏まえ、「薬局によっては相変わらず調剤中心の実習が見られる。薬を出しているだけという実習が結構ある。在宅医療、OTCの体験を十分にできなかったという報告もある」などと指摘。2期の病院実習でも、病棟業務体験の大半の時間を下調べに費やしている事例があるとし、「薬物療法の実際を学べる参加・体験型の実務実習になるように、関係者が考える必要がある」と呼びかけた。
一方、鈴木氏は「大学の事前学習で学んだ内容を実務実習に反映できたというポジティブな意見もある」と報告。「臨床現場の実際の患者さんの薬物療法について課題や解決策を検討するなど、疾患ベースで考えられるようになってきた」と新たな実習体系の効果を語った。
小佐野博史氏(帝京大学薬学部教授)は、1期の薬局実習について同大学の学生を対象に調査したところ、「期待通り」「期待以上に満足」と回答した学生は8割以上に達したと報告。学生が十分に学べなかった事項として、▽在宅医療における注射薬調剤の処方鑑査や無菌調製▽地域における保健衛生活動▽問題点の原因を探索し、適切な三次資料の根拠に基づく薬物療法の提案――などを提示した。
新たな実務実習では、癌、高血圧、糖尿病など代表的な8疾患の患者に、継続的に関わることが求められている。鈴木氏は「薬局実習のみでは8疾患を体験できなかった学生が多数存在した。特に癌、脳血管障害の体験が少なかった」と指摘した。
ただ、現場からは「学生も大学も数にこだわりすぎる」との声があると紹介。「その患者さんの背景を考え、薬物療法がどう進んだのかを継続的に把握することが大事。数の多い少ないはあまり関係がない」とした。
佐藤英治氏(福山大学薬学部教授)も、過去のトライアルなどを通じて「8疾患を網羅するために単発でしか患者に関われないことが多く、継続的に関与できなかったとの意見がある」と述べ、「8疾患にこだわるのは逆にネガティブになる」と強調。小佐野氏は、1期の薬局実習では6割の学生が8疾患をほぼ網羅できたとし、「以前に危惧していた、ある一定の疾患をただ繰り返し学ぶことから比べると、疾患の分布は広がってきている」と語った。
平田收正氏(大阪大学大学院薬学研究科教授)は、関西地区における薬局と病院のグループ化について「実習施設が決定してから実習内容を協議するのではなく、事前に薬局、病院、大学が22週の実習をどうするかを協議している。各施設が情報交換し、それぞれの特徴を補完して一貫性ある実習を構築する」と利点を語った。一つの病院と複数薬局がグループになることが多く、現在247グループが形成されている。