笑顔を数値化し、身体的・精神的指標の変化を調査
近畿大学は7月11日、「笑い」の測定方法を開発するとともに、笑いがもたらす身体的および心理的影響を解析したと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室心療内科部門の小山敦子教授らの研究グループが、吉本興業株式会社、オムロン株式会社、西日本電信電話株式会社と共同で行ったもの。
笑いは、人間にとって日常的な動作であるにも関わらず、定義が曖昧で表情の評価も難しいことから、その研究は難しいとされてきた。今回研究グループは、笑いを「コメディアンが参加者を笑わせることができる状況を作り出して、参加者が笑ったこと」と定義した上で、表情をスコア化する方法を用いて笑顔を数値化し、笑顔と身体的・精神的指標がどのように変化するかを調査した。
なお、参加者の笑いを引き出す方法として、吉本興業が吉本新喜劇と漫才・落語を提供。参加者の表情データの測定をオムロンが、心拍数と呼吸のバイタルデータの測定をNTT西日本が担当した。
笑いが「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」のスコアを改善
実験は、2017年2月15日~3月15日に「吉本なんばグランド花月」にて、一般から募集した20人に対し、計3回、2週間間隔で吉本興業提供による吉本新喜劇と漫才・落語を鑑賞してもらい、鑑賞前後で、心理検査とアンケート調査を実施。また、観賞中に表情データ、バイタルデータを測定した。笑顔の数値化には、オムロン社製のHVC(Human Vision Components B5T-007001)を用いて、計3回、2週間間隔で表情データを収集した。HVCは、人の表情について「真顔」「喜び」「驚き」「怒り」「悲しみ」の5分類の変化を捉えることができる。同研究では、笑顔を測定するため、このうちの「喜び」「驚き」に注目してデータを収集。同時に、バイタルデータも測定し、全体・性別・笑いの度合いの3グループに分けて解析を実施した。
その結果、笑いが「緊張・不安」「怒り・敵意」「疲労」のスコアを改善することが認められた。グループ別にみると、男性グループでは、「緊張・不安」「怒り・敵意」のスコアの改善が、女性グループでは、「混乱」のスコアの改善が認められた。これは、性別でユーモアの解釈が異なることがあるため、結果に違いが見られた可能性が考えられるという。また、笑いの度合いが高いグループでは、「緊張・不安」「抑うつ」「怒り・敵意」で改善が認められた。これにより、心から笑いを楽しめた参加者は、より「笑いの効果」が見られる傾向であることが判明した。
今回の研究により、笑いによる心理的スコアの改善が見られたことから、今後研究グループは、被験者のタイミングやシチュエーションによって効果に違いが出るかを検証する予定。まずは、吉本興業の公演の観客を対象に、笑いを必要とするシチュエーション(就職活動中、悩みがあるときなど)をアンケート調査し、その上位となったシチュエーションに該当する被験者を集めて、笑いの効果検証を計画している。
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・近畿大学 プレスリリース