iCARTに関する研究成果を武田薬品に継承
京都大学iPS細胞研究所(以下CiRA)および武田薬品工業株式会社は7月16日、新たなプログラム開始に伴い、新規iPS細胞由来キメラ抗原受容体遺伝子改変T(CAR-T)細胞療法「iCART」に関する研究成果が、両者の共同研究プログラム「T-CiRA」から武田薬品に継承されたことを発表した。T-CiRAの契約条件に従い、武田薬品はiCART製品の全世界における開発権と商業化権を有し、CiRAは開発の進捗や承認に対応したマイルストーン収入を得る。武田薬品とCiRAは引き続き連携し、2021年のFirst-in-Human試験実現に向け、iCARTプログラムを開始するという。
T-CiRA(Takeda-CiRA Joint Program for iPS Cell Applications)は、2015年に設立されたCiRAと武田薬品の10年間の共同研究プログラムで、2016年から研究活動を本格始動。武田薬品が200億円の提携費用を提供し、CiRAの山中伸弥所長の指揮のもと、CiRAおよび他研究機関の研究者のリードによる複数のプロジェクトを実施している。具体的には、がん免疫療法、心不全、糖尿病、神経精神疾患、および難治性筋疾患などの疾患領域におけるiPS細胞技術の臨床応用に向けた最先端の研究を行っている。
低コストで早期提供可能なCAR-T細胞療法によるがん治療の実現が目標
CAR-T療法は、免疫細胞の一種であるT細胞の遺伝子を、特定のがん細胞を認識して破壊することができるように改変する、免疫療法の一種。しかし、患者の血液からT細胞を取り出して遺伝子を改変するという、現行の自家CAR-T療法は、長い時間と多額の費用が必要となる。CiRAの金子新准教授と武田薬品の研究者らのチームは、同施設において作製した「再生医療用iPS細胞ストック」をもとにクローン化したiPS細胞を用い、患者にすぐに提供可能なiCARTをT-CiRA共同研究を通じて開発。この療法は非臨床試験において、CD19を標的とするiCARTが強い抗腫瘍効果を発揮することが明らかになっている。
金子准教授は武田薬品の社外アドバイザーとして、今後もiCARTプログラムに関わるという。同プログラムは、1種類のiPS細胞マスターセルバンクから均一な細胞製剤を大量生産する製法を開発し、現行のCAR-T療法よりも低価格で患者に提供することを目標としている。
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