国内最大規模の調査、63施設634症例が対象
アストラゼネカ株式会社は7月9日、卵巣がんにおけるBRCA遺伝子変異の保有率に関する日本初の大規模調査「Japan CHARLOTTE study」を国内63の医療施設で実施したと発表した。調査結果はInternational Journal of Gynecological Cancer電子版に掲載されている。
この調査は、国内における新規診断を受けた上皮性卵巣がん、原発性腹膜がん、卵管がん症例のBRCA遺伝子変異の保有率を把握することが目的。2016年12月から2018年6月までに登録された666症例のうち、BRCA遺伝子検査を実施した634症例を対象に調査した。結果は次の通り。
・進行卵巣がん(FIGO分類3期または4期)におけるBRCA遺伝子変異は24.1%(78例/BRCA1:16.3%、BRCA2:7.7%)
・卵巣がん全体(FIGO分類1期~4期)のBRCA遺伝子変異は14.7%
(93例/BRCA1:9.9%、BRCA2:4.7%)
・診断名別のBRCA遺伝子変異は、上皮性卵巣がんで12.7%(68/534例)、卵管がんで29.2%(14/48例)、原発性腹膜がんで21.2%(11/52例)
組織学的分類別では、短期間で発症し、進行がんが多い高異型度漿液性がんにBRCA遺伝子変異が最も多く、その割合は28.5%(78/274例)。BRCA遺伝子検査を受けた患者の96%以上が、実施前のカウンセリングに対して実施者の職種にかかわらず、「十分満足している」または「満足している」と回答した。
婦人科領域のがんゲノム医療を推進に期待
日本人における卵巣がん患者のBRCA遺伝子変異の保有率は、これまでデータが限られていた。しかし、今回の調査結果から新規診断を受けた卵巣がんにおけるBRCA遺伝子変異陽性は14.7%と、欧米人を対象とした研究報告(14.1%)と同程度であることが明らかとなった。また、進行卵巣がんにおける陽性の割合は24.1%と、早期卵巣がん(4.9%)より高い保有率だった。
BRCA1およびBRCA2は損傷したDNAの修復を担う遺伝子で、細胞のがん化を抑制する働きがある。これら遺伝子のいずれかに変異があることで、DNAの正常な修復が妨げられ、卵巣がんや乳がんになりやすくなると考えられる。一般の人に比べて、BRCA1に変異がある人の卵巣がんの発症率は39~60倍、BRCA2に変異がある人は16~27倍高くなるとされる。
この調査の共同研究者である、新潟大学医学部産科婦人科学教室の榎本隆之先生は「日本人におけるBRCA遺伝子変異の保有率が明らかになったことで、患者さんが遺伝子検査の目的を理解し、より納得して検査を受けられようになることを期待する。遺伝子変異の有無を確認することで、われわれ医師も患者さんにとってより最適な治療を選択することが可能となる」と、述べている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース