ペイシェント・ジャーニーを重視。患者への理解を深めて適切な情報提供目指す
武田薬品工業株式会社は6月28日、包括的に患者をケアする取り組みとして「Patient First Program(ペイシェント・ファースト・プログラム)」を立ち上げたことを発表した。同日開催したメディアセミナーでは、ジャパンメディカルオフィス ヘッドのジュベル・フェルナンデス氏らが講演。同プログラム立ち上げの背景や目的を紹介した。
ジュベル・フェルナンデス氏
平均寿命の延伸や治療法の進歩に伴い、何らかの疾患を抱えながら生活を送る患者も珍しいものではなくなってきた。患者の価値観も多様化しており、疾患との向き合い方や人生観も様々だ。こうした背景から、個々の患者が自分らしい生活を送れるように、患者が抱える課題やニーズを把握・理解して患者の生活や診療の質を向上させようという動きが進んでいる。こうした動きの一環として同プログラムでは、「ペイシェント・ファースト・プログラム」の名のとおり、患者を中心に考え、患者の生活の質(QOL)の向上や、患者を取り巻く医療従事者、行政や介護者など関係者のサポート、さらには医療資源の適正化を目的に掲げている。
同プログラムでまず重視するのがペイシェント・ジャーニーだ。患者が症状を自覚してから医療機関を受診し、診断がついて治療を行う、その過程は患者によって様々であり、これを理解することが患者の抱える課題を把握するうえで重要になる。ペイシェント・ジャーニーを理解するために、同プログラムでは、患者も含めたアドバイザリーボードミーティングで患者にヒアリングを実施したり、疾患を抱えて日常生活を送ることによる困難を疑似体験できるプログラムを開発して同社外へ展開したりすることを予定しているという。こうした取り組みを通じて得られた知見を活かし、患者や患者団体との共同プログラムの開催や、患者支援のための情報発信、データ構築を目指すとしている。
「患者中心」を最優先に、まずは消化器系疾患、精神・神経疾患など3領域から
同プログラムがまず取り組むのは、「消化器系疾患」「希少疾患」「精神・神経疾患」の3領域だ。消化器系疾患では、炎症性腸疾患(IBD)患者、IBDの専門医、看護師、薬剤師、臨床疫学者が参加したアドバイザリーボードミーティングを2018年7月に開催。職種の垣根を超えた意見交換が行われ、参加した医療従事者からの反響も大きかったという。また、IBDという疾患について理解を深める目的で、実体験型の社内ラーニングプログラムを開発。参加者は、スマートフォンへ送られてくる特定の状況に患者として対応することで、患者の日常を体感できる。同ラーニングプログラムは、社外への提供も検討中だという。
精神・神経疾患領域では、米Verily社のスマートウォッチを用いてパーキンソン病患者の運動症状を測定する共同臨床研究を開始。進行の速さや症状の個人差、症状の日内変動を、スマートウォッチを用いて継続的にモニタリングする。得られたデータを解析し、将来的には症例ごとに効果的で対応可能な介入療法の開発へつなげたい考えだ。また、医療従事者だけでなく患者も運営に参画する「世界パーキンソン病コングレス」(2019年6月開催)にブースを出展。パーキンソン病患者対象の運動療法を紹介する冊子や、非運動症状への注意喚起など、日常生活での疾患管理に関する情報提供を行った。
同プログラムは、同社の営業部門から独立し、医師、薬剤師などの医療資格を持つ社員を中心に構成されたジャパンメディカルオフィスが中心となって進めていくという。フェルナンデス氏は、「”患者中心”が当社の最優先事項。すべての活動は患者さんのためになっているかどうかという考えに基づいている」とし、同社が保有する知的資源や能力を最大限活用しつつ、社外コラボレーションも積極的に推進していくとしている。
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・武田薬品工業株式会社 ニュースリリース