喘息などの合併症があり、治療が難しい患者多数
仏サノフィ社および米リジェネロン社は6月26日、「デュピクセント(R)」(一般名:デュピルマブ)が、米国食品医薬品局(FDA)から、他の薬剤と併用する治療薬として承認されたと発表した。コントロール不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の成人患者が治療対象となる。同社は2019年3月に、主要評価項目である種々の症状の改善を報告していた。
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、副鼻腔や鼻道の閉塞をもたらす慢性上気道疾患。症状として、呼吸困難、鼻閉、鼻汁、嗅覚障害、味覚障害や顔面圧迫感がみられる。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の患者の多くは、喘息などのType 2炎症性疾患もみられ、これら喘息の多くはより重症で、治療が困難。実際に、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を対象としたデュピクセントの臨床試験では、患者の59%が喘息を合併していた。同合併症により、喘息発作のリスクが高まる上に、症状による負担も大きく、健康関連QOLが大きく損なわれる可能性がある。
鼻閉・嗅覚障害・肺機能を改善、薬・手術の必要性が低下
デュピクセントは完全ヒトモノクローナル抗体。Type2炎症反応において中心的な役割を果たすタンパク質であるインターロイキン4およびインターロイキン13(IL-4およびIL-13)のシグナル伝達を特異的に阻害する。デュピクセントの臨床試験において、IL-4と IL-13を阻害すると、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、喘息やアトピー性皮膚炎に大きく関与するType 2炎症の緩和に役立つことが明らかにされた。
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、現在の標準療法であるステロイド点鼻薬や全身性ステロイド薬、副鼻腔手術などを受けても症状が再発することが頻繁にある。2件の第3相臨床試験において、デュピクセントは鼻閉の有意な改善をもたらし、多くの患者で投与4週後と早期に嗅覚障害の改善がみられた。また、全身性ステロイド薬の使用や手術の必要性が低下し、健康関連QOLも改善。さらに、喘息を合併している患者では呼吸が改善した。
今回の承認は、IL-4とIL-13がType2炎症の重要な誘発因子であることをさらに裏付けるものであり、両社は今後も、好酸球性食道炎、食物・環境アレルギーなどのType 2炎症性疾患を対象にデュピクセントの研究開発を行っていきたいとしている。
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・サノフィ株式会社 プレスリリース