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食事による肥満の誘導に「自然リンパ球」が関与-理研

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2019年07月05日 PM12:45

近年発見された「自然リンパ球」は肥満に関与するのか?

理化学研究所(理研)は7月3日、食事による肥満の誘導に自然リンパ球という免疫細胞が関与することを発見したと発表した。この研究は、同生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの佐々木崇晴研究員、免疫細胞システム研究チームの小安重夫チームリーダー、自然免疫システム研究チームの茂呂和世チームリーダーらの研究グループによるもの。研究成果は「Cell Reports」に7月2日付で掲載された。


画像はリリースより

糖尿病や高血圧、脂質異常症などの発症リスクを増加させる「肥満」の誘導には、さまざまな複合的要因が関与しており、食事や生活習慣のみならず、免疫系や腸内細菌も関与することが知られている。

リンパ球は獲得免疫系のリンパ球と、自然免疫系のリンパ球「自然リンパ球」の2種類に分類される。T細胞やB細胞のような獲得免疫系のリンパ球は、外界から侵入した異物(抗原)の構造を特異的に認識して活性化する。一方、自然リンパ球は近年新しく発見された細胞であり、抗原特異的な受容体を持たず、周囲の細胞から産生されるサイトカインなどの情報伝達物質によって活性化する。この自然リンパ球が肥満の誘導に関与するのかについては、よくわかっていなかった。

脂肪組織のILC2ではなく、小腸のILC2が肥満の誘導に関与

研究グループは、リンパ球と肥満の誘導との関連性を明らかにするために、獲得免疫系のリンパ球(T細胞、B細胞、NKT細胞)を欠損したRag2-/-マウスと、自然リンパ球(ILCs)を含め、全てのリンパ球を欠損したIl2rg-/Rag2-/-マウスに高脂肪食を与えた。その結果、Rag2-/-マウスでは野生型マウスと同様に肥満が誘導されたのに対し、Il2rg-/-Rag2-/-マウスは肥満になりにくいことがわかった。このことは、獲得免疫系のリンパ球ではなく、自然免疫系のリンパ球が肥満の誘導に関与していることを意味する。そこで、どの自然リンパ球が肥満の誘導に関与しているのかを調べるために、1型自然リンパ球(ILC1)、(ILC2)、3型自然リンパ球(ILC3)をそれぞれ欠損したマウスに肥満を誘導したところ、ILC2を欠損したマウスとILC3を欠損したマウスが肥満になりにくいことがわかった。特に、ILC2欠損マウスの方が肥満になりにくかったことから、ILC2が肥満の誘導に重要な役割を持つことが判明した。

これまでの研究で、脂肪組織のILC2が脂肪細胞などから産生されるインターロイキン33()と呼ばれるサイトカインによって活性化すると、肥満を抑制することが報告されていた。そこで、野生型マウスから脂肪組織のILC2を採取し、Il2rg-/-Rag2-/-マウスに移植して高脂肪食を摂食させたところ、確かに肥満は誘導されなかった。ところが、栄養を吸収する臓器である小腸に存在するILC2を野生型マウスから採取し、Il2rg-/-Rag2-/-マウスに移植して高脂肪食を与えた結果、肥満が誘導されるようになった。この結果は、脂肪組織のILC2ではなく、小腸のILC2が肥満の誘導に関与することを意味している。

自然リンパ球はヒトにも存在し、マウスと類似した機能を持つことが知られている。「今後、研究が進んで自然リンパ球がどのように肥満の誘導に関与するのかが明らかになれば、新しい肥満改善法やメタボリックシンドロームの予防・治療法の開発につながると期待できる」と、研究グループは述べている。

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