生体リズムに関連するさまざまな疾患が生じやすい緑内障
奈良県立医科大学は7月2日、緑内障患者では睡眠中の血圧(夜間血圧)が上昇していることを見出したと発表した。この研究は、同大奈良県立医科大学眼科学講座の吉川匡宣講師、緒方奈保子教授、同大疫学予防医学講座の佐伯圭吾教授、大林賢史准教授と共同で行ったもの。研究成果は「Ophthalmology」に掲載されている。
画像はリリースより
緑内障は目における慢性の神経変性疾患で、日本人での有病率は40歳以上の5%(20人に1人)と頻度の高い疾患。視野・視力障害を引き起こすものの、自覚症状に乏しいことや、視神経障害を改善する治療がないことなどから、日本の中途失明原因の第1位となっている。その一方、血圧には1日のうちで変動(生体リズム)があり、生理的には夜間の睡眠中に血圧が下降することが知られている。睡眠中の血圧は、日中活動時の血圧よりも心血管系疾患の発症予測能が高く、臨床的にとても重要な指標とされている。
睡眠や血圧などの生体内のリズム調整には、目(特に網膜神経節細胞)への光刺激が最も重要とされている。また、緑内障では網膜神経節細胞が障害されることから、生体リズムに関連するさまざまな疾患が生じやすいことが知られており、研究グループは、光を浴びる量とは独立して、緑内障がうつ病と関連していることを報告している。
年齢・肥満・糖尿病等とは独立して夜間血圧が上昇
研究グループは今回、奈良県立医科大学眼科へ通院中の緑内障患者109名(平均年齢71.0歳)と、地域住民対象の疫学研究参加者のうち緑内障を除外したコントロール708名(平均年齢70.8歳)の「24時間連続血圧データ」を比較し、睡眠中の血圧が緑内障群119.3mmHg、コントロール群114.8mmHgと緑内障患者で有意に睡眠中血圧が上昇していることを明らかにした。また、緑内障患者では睡眠中の血圧が下降しないタイプ(non dipper)が1.96倍多いという結果を得た。
今回の研究成果により、緑内障患者では年齢・肥満・糖尿病等とは独立して夜間血圧の上昇が認められることから、それを原因とした心血管イベントや死亡が生じやすい可能性が示唆された。
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・奈良県立医科大学 報道資料