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長寿遺伝子「SIRT1」が、筋の細胞膜修復をしていることを発見-札幌医科大

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2019年07月01日 PM01:00

SIRT1が筋ジストロフィーを改善させる仕組みについて研究

札幌医科大学は6月27日、長寿遺伝子サーチュイン()が、細胞膜の破れた穴を塞ぐ働きをすることを突き止めたと発表した。この研究は、同大医学部薬理学講座の堀尾 嘉幸教授らの研究グループによるもの。この研究成果は、国際科学雑誌「PLoS ONE」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

SIRT1は、酵母や線虫などで寿命を延ばす働きをするSir2(長寿遺伝子)の仲間で、ヒトでも細胞の生存を促す働きがある。SIRTは体のいろいろなタンパク質を脱アセチル化することによって機能を調節している。これまでに、研究グループはポリフェノールの1つであるレスベラトロールがSIRT1活性化を介して筋ジストロフィーマウスの筋力を増強し、持久力を増し、筋の崩壊を抑えることを示してきた。また、他の研究グループもSIRT1活性化剤に筋ジストロフィーを改善させる働きがあることを報告している。しかし、なぜ、SIRT1がそのような効果をもつのかについては不明だった。

SIRT1活性化による治療効果に細胞膜の修復機構も関与している可能性

今回研究グループは、SIRT1を骨格筋のみでノックアウトしたマウスを用いて、SIRT1が骨格筋の筋力や持久力の維持に必要で、SIRT1がなくなると筋が壊れやすくなることを見出した。

これまで同研究グループは、SIRT1が細胞膜の形を変える作用をもつことを示し、筋肉ではSIRT1が細胞膜の直下に多いことも併せて、SIRT1が直接に細胞膜の損傷と修復のメカニズムに関与するのではないかと考えた。そこで、動画で生きた細胞の細胞膜の損傷・修復の過程を顕微鏡観察する仕組みを作って観察したところ、正常な細胞や筋では膜が損傷されると穴の直下に細胞内べジクル(小胞)が集まり、穴をドーム状の膜構造物で覆い、数分以内に穴は閉じた。ところが、SIRT1を働かなくすると、細胞内べジクルが集まらず、ドーム状の構造物は形成されず、穴も閉じないことが判明した。

細胞膜に開いた穴を修復する機構はヒトの体の細胞すべてに備わっており、特に、収縮と弛緩が繰り返される筋肉では膜は絶えず破断されるため、膜修復機構は筋の維持にきわめて重要。しかし、膜の修復についての研究は非常に少なく、膜修復に関与するタンパク質の遺伝的な欠損が筋ジストロフィーの原因となることが明らかにされていたものの、その調節機構についてはほとんどわかっていなかった。

今回の研究により、SIRT1が穴の修復に必要であることが初めて明らかにされ、穴の修復に調節機構がある可能性が示された。また、SIRT1を活性化させると筋ジストロフィーが改善するメカニズムに、膜修復が関与している可能性も示唆された。SIRT1は、いくつものタンパク質の調節を介して細胞の生存を図ることが知られていたが、今回の研究で初めてSIRT1による細胞生存メカニズムの1つに膜修復があることがわかった。研究グループは「今後はどのようにSIRT1が膜修復に関与するかを詳細に調べ、まだ明らかにされていない膜修復機構を解明することに貢献したい」と、述べている。

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