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【毒性学会】小児薬の開発停滞打開へ-非臨床データ外挿に活路

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2019年07月01日 PM12:00

小児用医薬品の開発を推進していくために、幼若動物を用いた非臨床試験データの活用に注目が集まっている。ICH-S11ガイドラインでは、小児用医薬品開発における追加の非臨床試験の実施要件や幼若動物の試験デザインに関する規制の国際調和を進めており、年内には最終化する予定だ。6月27日に徳島市内で開かれた日本毒性学会学術年会のシンポジウムでは、臨床試験で小児被験者データの集積に苦労する中、幼若動物の非臨床試験データから小児臨床試験に外挿させる開発の実現に向けて議論した。

小児用医薬品の開発をめぐっては、欧米では成人での開発過程で小児用量・用法の開発も行うことが義務化されているが、日本には法規制がないのが現状。国内では成人適応の承認直前で、ようやく小児用の開発必要性の検討を開始しており、欧米の状況とは大きな乖離があるのが課題となっている。

日本製薬工業協会医薬品評価委員会の佐藤且章氏(グラクソ・スミスクライン開発本部)は、臨床開発担当者の立場から、「欧米は小児中心の開発を行う組織があるが、日本にはない」と課題を指摘。「小児が臨床試験に参加する場合には、学校を休まないといけなかったり、新たな治療を子どもに受けさせようとする親も少ない」と述べ、成人対象の臨床試験で小児被験者の参加が難しい現状を説明した。

その上で、成人データを適切に小児へと外挿する現在の開発方法に加え、S11ガイドラインの改定により、「幼若動物試験のデータで小児治験をカバーできないか」と提案。

幼若動物試験データを小児臨床試験に外挿させることにより、小児の被験者数を減らす方向性に期待感を示した。

小児治験では有効性・安全性エビデンスが限られることを理由に、参加をためらう保護者が多い中、「幼若動物試験データを示すことで、安全性リスクを的確に説明できるのではないか」と述べた。

医薬品医療機器総合機構()新薬審査第三部の西村拓也氏は、国内で12歳以下の小児適応を取得した医薬品のうち、約40%の品目で幼若動物試験が実施され、それを審査した経験から「適切に実施された幼若動物試験では、臨床試験のリスクを低減する情報が得られている」と強調。幼若動物試験結果に基づいた小児の臨床試験計画を策定する重要性を指摘した。臨床試験計画の策定に当たっては、薬物動態や薬理作用の標的、毒性標的など、ヒトと動物には組織の発達で違いがあるため、種差を考慮した試験設計を求めた。

また西村氏は、小児用医薬品で使われる添加剤の安全性評価にも言及。「医薬品で使用前例のある添加剤でも小児で初めて投与される場合には、安全性の懸念事項になる可能性がある。幼若動物を用いた評価が添加剤でも役立つかどうか一考しておくべき」と述べた。

非臨床担当者の立場から、武田薬品薬剤安全性研究所の松本清氏は、「S11ガイドラインで幼若動物を用いた用量設定試験が重要視されているものの、各社で実施方法にバラツキがある」と問題点を挙げ、小児の臨床用量を検討する上では、「最適な試験デザインや評価項目となるエンドポイントを設定することが必要」とした。

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