患者の精神的な側面を考慮しないまま麻薬性のオピオイド鎮痛薬を過剰処方することで、合法的な薬物依存症を引き起こし、深刻な社会問題につながることが懸念されている。埼玉県立精神医療センター副病院長の成瀬暢也氏は、21日に新潟市内で開かれた日本精神神経学会学術総会で講演し、慢性疼痛患者が大学病院でオピオイド製剤を過剰処方されたことで離脱症状などを引き起こし、同センターを受診することとなった事例を紹介。「オピオイドの使用は常に乱用・依存形成のリスクを伴っており、使っても逮捕されない薬物として今後重要な問題になると予想される」と警鐘を鳴らした。
オピオイド製剤は、癌性疼痛や非癌性の慢性疼痛に対して用いられる麻薬性鎮痛薬。国内の処方に関して癌性疼痛では、非オピオイド製剤で十分な鎮痛効果が得られない患者に対して強く推奨されているほか、非癌性の慢性疼痛に対しても一部のオピオイド製剤の保険適応が認められた。