オピオイド製剤は、癌性疼痛や非癌性の慢性疼痛に対して用いられる麻薬性鎮痛薬。国内の処方に関して癌性疼痛では、非オピオイド製剤で十分な鎮痛効果が得られない患者に対して強く推奨されているほか、非癌性の慢性疼痛に対しても一部のオピオイド製剤の保険適応が認められた。
現在、非癌性慢性疼痛に使用できる弱オピオイド製剤としては、トラマドール/アセトアミノフェン配合剤、ブプレノルフィン貼付剤、コデイン散剤1%・同10%・コデイン錠剤1%、強オピオイド製剤はモルヒネ錠、モルヒネ原末、フェンタニル3日用貼付剤がある。
成瀬氏は、大学病院麻酔科で強オピオイド製剤が積極的に処方された事例を提示。40代男性患者が交通事故で腰椎圧迫骨折などを受傷し、複数の医療機関を受診したものの改善されず、大学病院で処方されたモルヒネの過量服薬で救急搬送を繰り返した。その後、同センターを受診し、1日最大300mgのモルヒネを使用していたうえ、既に数千錠をため込んでいたことが判明した。
また、別の30代女性患者では、腰椎ヘルニアを発症し、大学病院でフェンタニル、モルヒネが処方されたが、離脱症状が生じたことから、依存症治療のために同センターを受診した。
これら患者は、オピオイド製剤に対する不安から自ら精神科を受診し、実際に薬物依存症の診断基準を満たしていたことから、成瀬氏は「オピオイドを処方した医師は、患者との信頼関係ができておらず、患者の精神科的側面を考慮していなかったと考えられる」と分析。
慢性疼痛患者へのオピオイド製剤の処方について、現在でも整形外科領域でトラマドール/アセトアミノフェン配合剤が頻繁に処方され、コデインが日常的に用いられているとして、「今後ますます加速する」と警告。過去に向精神薬「ベンゾジアゼピン」の乱用が社会問題となったことを踏まえ、「第2のベンゾジアゼピンになるのではないかと危惧している。オピオイドを処方する医療機関は、重要な問題にならないかどうか、今後さらに敏感になる必要がある」と懸念を示した。