病気の進行が原因遺伝子により異なるため、解明が重要
九州大学は6月18日、1,204名の定型網膜色素変性患者の遺伝子解析を行い、日本人患者で多く認められる原因遺伝子とその変異を明らかにしたと発表した。この研究は、同大学院医学研究院眼科学分野の秋山雅人講師(眼病態イメージング講座)および小柳俊人大学院生(医学系学府博士課程)、池田康博准教授、園田康平教授、理化学研究所生命科学研究センターの鎌谷洋一郎チームリーダー(研究当時)、桃沢幸秀チームリーダー、久保充明副センター長(研究当時)らの共同研究グループによるもの。研究成果は、英国の科学雑誌「Journal of Medical Genetics」の掲載に先立ち、オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
網膜色素変性は、眼の光を感じる部位である網膜に変性をきたし、進行性の視覚障害を起こす病気。日本の中途失明原因の第2位であり、約3万人の患者が日本にいると考えられている。遺伝子の異常が原因である遺伝性疾患で、80種類以上の原因遺伝子が報告されている。現時点で確立された有効な治療法はないが、近年では、九州大学病院でも臨床研究を進めている遺伝子治療が検討されてきており、病気の進み方が原因遺伝子により異なることも知られている。こうしたことから、原因遺伝子や変異を特定する重要性は高まっている。これまで欧米を中心に多数例での遺伝学的研究が進められてきたが、日本人における検討は比較的小規模なものに限られていた。
原因遺伝子や変異の割合は人種間で大きく異なることが判明
研究グループは、国内の6施設(九州大学、順天堂大学、東北大学、名古屋大学、浜松医科大学、わだゆうこ眼科クリニック)で収集された日本人の定型網膜色素変性患者1,204名のDNAサンプルを用いて、83の原因遺伝子の翻訳領域の全塩基配列を対象に調査を実施。理化学研究所生命医科学研究センターで解析を行い、日本での定型網膜色素変性に特徴的な原因遺伝子と変異を明らかにすることに成功した。また、それらには、常染色体劣性、常染色体優性、X染色体劣性の原因遺伝子が含まれていた。
今回の研究により、日本人において大きな影響を与えている原因遺伝子および変異が判明し、それらの割合は人種間で大きく異なることが明らかになった。「今後、日本人における同疾患の病因の把握や、将来的な治療法の開発、その適応の選定に役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。
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