■薬物動態と免疫原性を検討
免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(製品名:オプジーボ)、ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)の薬物動態と抗体産生が誘導される免疫原性の関係について長期に観察した結果、薬剤投与で日本人患者の体内に誘導される「抗薬物抗体」の産生が臨床アウトカムに影響を与える可能性が、福土将秀氏(旭川医科大学病院副薬剤部長)らが実施中の前向き観察研究で分かった。薬剤の曝露量が少ない患者で投与量を最適化することにより、免疫チェックポイント阻害薬の効果を改善できることも示された。まだ予備的なデータではあるものの、薬剤師の臨床研究から免疫チェックポイント阻害薬の遅発性有害事象に関する新たな知見が発信された格好だ。
ニボルマブとペムブロリズマブは、様々な癌の治療に広く用いられ、優れた効果を示すことが報告されており、今後適応拡大による使用の増加が予想されている。ただ、PD-1阻害薬の投与が広がることで高い効果が得られる患者が増える一方、重篤な副作用の発生リスクも懸念されているところだが、日本人患者における薬物曝露量と治療効果、免疫原性など有害事象との関係については十分に解明されていないのが現状である。
そこで福土氏らは、ニボルマブとペムブロリズマブの血中濃度と抗薬物抗体を長期間フォローアップし、これらが有効性と安全性にどう関連しているのかを検討した。
2016年5月から今年1月まで、同院でニボルマブまたはペムブロリズマブによる治療を行った患者147人を対象に、毎回の点滴投与前と治療終了後、血液検査後の残った検体を回収した。血漿中の薬物濃度測定をELISA法によって実施し、ブリッジングELISA法を用いて薬剤投与で患者の体内に誘導される抗薬物抗体の存在を評価した。
その結果、ニボルマブ投与患者における抗薬物抗体の有無を見たところ、初回投与日で2人、最後のサンプル取得日で4人に認められ、ペムブロリズマブ投与患者においては初回投与日で2人、最後のサンプル取得日で3人に確認された。
さらに詳しく見ると、ニボルマブとペムブロリズマブを投与し、初回投与日で抗薬物抗体が陽性となった患者4人のうち、3人で投与終了後に薬剤性の発熱が認められ、最後のサンプル取得日で抗薬物抗体が陽性となった患者は、陰性となった患者と比べて、より早期に病勢が進行していたことが分かった。
ニボルマブとペムブロリズマブについては、治療終了後、約1年を経過した後も持続的な薬物の曝露が確認され、実際ニボルマブ治療を終了して8.6カ月後に遅発性の副腎不全を発症した患者1人で、血液中にニボルマブが残っていることが確認された。
有効性評価ができたニボルマブ投与患者71人、ペムブロリズマブ投与患者41人において、初回効果判定により効果が得られた患者では、病勢が進行した患者に比べて治療早期の薬物濃度の平均値が有意に高いことが明らかとなった。
これらの研究結果を踏まえ、福土氏は、まだ予備的なデータとしつつ、「免疫チェックポイント阻害剤関連の遅発性有害事象の病因メカニズムに新たな知見を与える」とし、「薬物の曝露量が少ない患者では、投与量を最適化することにより、効果を改善できる可能性が考えられた」とした。
さらに、抗薬物抗体が持続的に陽性となった患者では、早期の病勢進行が多く認められていたことから、「抗薬物抗体が臨床アウトカムに影響する可能性が考えられた」とし、今後さらに前向きな検証が必要としている。