同大は、栃木県の大田原キャンパスに薬学部を設置している。定員増が承認された場合、大学にとって二つ目の薬学部になる。既に2月から、大川キャンパス内に5階建ての薬学部校舎の建設を開始しており、薬草植物園も新設する。
以前から新たな薬学部を設置する構想があったことに加え、地域を活性化したい大川市から設置要請を受けたことが後押しした格好。既に福岡県には、3薬系大学が存在するものの、佐賀県も含めた周辺地域での薬剤師不足は続いていることから、設置を決断した。
巨大なグループになった大学と関連医療機関・福祉施設の出発点とも言える高木病院が大川市にあるため、大川キャンパス拡充への大学側の強い思いも背景にあったようだ。
都市部にある薬学部に比べて地理的なハンデはあるが、特徴ある教育を行うことで差別化を図りたい考え。ゼロから教育を立ち上げるのではなく、大田原の薬学部で培った教育手法を導入できる強みを背景に、大川キャンパスの環境を生かした臨床教育を組み込む計画だ。
大田原で3月まで薬学部長を務め、来年4月に福岡薬学部長に就任予定の武田弘志氏は「大学の特徴を生かし、チーム医療やチームケア、地域医療に貢献できる薬剤師を育成したい。研究能力を持ち、医療現場でリサーチマインドを発揮できる薬剤師を育てたい」と意欲を語る。
臨床教育を充実させる姿勢は、教員採用にも表れている。就任予定教員37人中、教授は19人。教授の約半数に当たる9人は医師となる。学生は、疾患の診断や治療を経験豊富な医師から学ぶことができる。薬物治療の教育は、医師と薬剤師の視点を両方学べるオムニバス形式で展開する予定。武田氏は、「基礎と臨床を融合させた教育を目指したい」と話している。
大川キャンパスに隣接する高木病院、福岡市にある福岡山王病院など関連施設を有することも特徴で、武田氏は「早期体験教育や臨床実習、実務実習などに関連施設をフル活用したい」と意気込む。
多職種連携教育も充実させる。大川キャンパスには理学療法、作業療法など4学科、福岡市の福岡キャンパスには看護学科が設置されていることから、薬学科を加えた6学科の学生で多職種連携教育を実施する計画だ。薬学生は、早期体験実習や講義で多職種の役割を学ぶほか、他学科の学生とチームを組んで具体的な症例の問題解決策を討議したり、病院で実習を受ける見通し。
国際交流を推進する校風を受けて、福岡薬学部の学生は全員、海外の大学や病院で2週間の研修を受けることになるという。
薬剤師国家試験対策にも力を入れる。大田原の薬学部では高い国試合格率を達成しており、その教育手法を取り入れる。学費は他大学に比べて安く、6年間で1000万円以内に収まる範囲に設定。授業料を免除する特待奨学生制度も充実している。