非肥満者が生活習慣病になる原因を究明
順天堂大学は6月14日、非肥満者が生活習慣病になる原因を究明し、非肥満者では内臓脂肪の蓄積よりも脂肪肝が筋肉の代謝障害と強く関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of the Endocrine Society」に掲載されている。
画像はリリースより
生活習慣病になるアジア人の多くは非肥満(BMI25kg/m2未満)である。その理由として、欧米人などと比較するとアジア人では皮下脂肪に脂肪を十分に貯蔵できず、脂肪細胞が容易に容量オーバーで遊離脂肪酸として溢れ出し(リピッドスピルオーバー)、内臓脂肪とともに肝臓や骨格筋に蓄積(異所性脂肪)、その結果、糖尿病やメタボリックシンドロームの根本的な病態である「インスリン抵抗性」が生じる、というメカニズムが考えられている。
これまで同メカニズムを背景に、内臓脂肪の蓄積や、脂肪肝がインスリン抵抗性の指標となることが報告されてきた。しかし、内臓脂肪が溜まっている人では脂肪肝になっていることが多いため、非肥満者において、どちらがより有用なインスリン抵抗性の指標となるのかは、明らかにされていなかった。
内臓脂肪蓄積があっても脂肪肝がなければインスリン感受性は良好
研究グループは、BMIが正常範囲内(21~25kg/m2)の日本人男性(87名)を対象に、全身の代謝状態や脂肪分布に関する調査を行った。その結果、対象者の内臓脂肪量と肝脂肪量の関連において、全体的に正相関するものの、さまざまなパターンがあることが明らかになった。そこで、内臓脂肪面積100cm2以上、肝内脂質量5%以上をそれぞれ内臓脂肪蓄積、脂肪肝と定義し、対象者を両者とも基準値以下のコントロール群(54名)、内臓脂肪蓄積単独群(18名)、脂肪肝単独群(7名)、内臓脂肪蓄積+脂肪肝群(8名)の4群に分けて、インスリン感受性や臨床背景因子を比較した。すると、内臓脂肪蓄積がなくても、脂肪肝があると脂肪組織と骨格筋のインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)を認め、これとは逆に内臓脂肪蓄積があっても脂肪肝がなければインスリン感受性は良好であること、内臓脂肪蓄積と脂肪肝が両方あっても、脂肪肝単独とインスリン抵抗性は同程度であることがわかった。また、脂肪組織インスリン感受性も同様の結果だった。つまり、非肥満の日本人男性では、内臓脂肪蓄積よりも脂肪肝の方がより強くインスリン抵抗性と関連することが明らかとなった。
現在は特定健診(メタボ健診)などで内臓脂肪蓄積に着目した介入が進められているが、内臓脂肪がそれほど多くなかったとしても、脂肪肝がある人はインスリン抵抗性や、さらなる代謝障害に注意して生活習慣の改善にあたる必要があると考えられる。同研究結果が示すように、脂肪肝がある人では、骨格筋や脂肪組織のインスリン抵抗性を持っている可能性が高く、現在ガイドラインでも示されているように、生活活動量を増やすなど体力が向上するような活動にも取り組むことが、合理的かつ有用であることが示唆された。同時に、脂肪肝がある人は、すでにリピッドスピルオーバーを来している可能性が高いことから、体脂肪を減らすような減量も効果的だという。
研究グループは、「これらの因果関係の詳細は不明な部分もあるため、今後は介入研究を通したさらなる検証が必要だ」と、述べている。
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・順天堂大学 プレスリリース