関西医科大学は、膵癌に対する抗癌剤併用療法の臨床試験費用をクラウドファンディングで募集することにした。治療法は既に先進医療に認定されており、保険適用を目指して第III相試験を実施する。国や製薬企業から資金援助を受けられなかったため、インターネット上で社会から広く寄付金を募ることになった。
同大が臨床試験を進めるのは、腹膜転移を伴う膵癌に対する抗癌剤併用療法。経口抗癌剤「S-1」に加え、「パクリタキセル」を腹腔内に設置したポートと静脈から投与する。
第III相試験では、遠隔転移膵癌の標準治療「ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法」と「S-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内投与併用療法」の群間比較を実施する。患者180人を対象に、全国30施設が参加する予定。結果の公表まで約5年を見込んでいる。
これまで実施した第II相試験結果は良好で、腹膜転移膵癌患者33人のうち8人の腹膜転移が消失。切除手術を実施できるようになるなど、生存期間延長や症状緩和に有効性を示した。
ただ、パクリタキセルの膵癌に対する投与は保険適用外で1カ月6~10万円程度の費用が発生し、現実的な選択肢ではないため第III相試験を実施し、保険適用を目指すことにした。
10日の記者会見で、同大学外科学講座診療教授の里井壯平氏(写真)は「第I・II相試験では有効性を示したと考えているが、現在の標準治療との比較はできていない。第III相試験で有効性を証明したい」と意気込みを語った。
募集開始時の目標金額は1000万円。11日には早くも寄付金額が目標を超えたため、目標金額を2500万円に修正。9月8日まで募集を続ける。