スタチンを服用中のハイリスク2型糖尿病患者を対象に検証
兵庫医科大学は6月12日、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値を下げる薬(スタチン)をすでに服用しているハイリスクの2型糖尿病患者に、糖尿病治療薬(DPP4阻害薬)を1年間投与する臨床試験を行った結果、糖尿病治療薬「アナグリプチン」に、さらに悪玉コレステロールを減少させる作用があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大臨床疫学の森本剛教授、琉球大学大学院医学研究科臨床薬理学の植田真一郎教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌Natureグループ誌「Scientific Reports」の電子版に掲載されている。
画像はリリースより
研究対象は、スタチンを8週間以上服用中のハイリスク2型糖尿病患者(20歳以上)。当該患者を同意のもとランダムに2つのグループに分け、アナグリプチンもしくはシタグリプチンという糖尿病治療薬をそれぞれ1年間投与した。投与開始から各グループの患者の血中悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値を3か月ごとに計測し、また、糖尿病の管理目標(ヘモグロビンA1c)値の数値も併せて分析した。
多剤服用の回避や、糖尿病に付随する疾患の減少に寄与する可能性
2種類の薬はどちらもDPP4阻害薬に分類され、よく似た作用機序を持つにもかかわらず、アナグリプチングループではシタグリプチングループよりも、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値が有意に低下した。また、アナグリプチングループでは、3か月目から悪玉コレステロール値が低下し、評価期間中、最後まで維持された。糖尿病の管理目標(ヘモグロビンA1c)値は、どちらのグループも良好な結果だった。
2型糖尿病の患者はもともと、心臓病や脳卒中を起こす危険性が高いことが知られている。研究グループは、「すでにコレステロール降下薬を服用している患者に、特定の糖尿病治療薬を投与することで、悪玉コレステロール値をさらに下げることを示したこの研究成果は、多剤服用を回避できる可能性があるだけでなく、将来的に糖尿病に付随した心臓病や脳卒中などを減らすことが期待される」と、述べている。
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