脳梗塞の予後を左右する「側副血行」
国立循環器病研究センターは6月12日、脳梗塞発症時の側副血行発達に高血圧が影響することを明らかにしたと発表した。この研究は、国循脳血管内科・脳卒中集中治療科の藤田恭平医師(現・東京医科歯科大学)、田中寛大医師、山上宏医長、古賀政利部長、豊田一則副院長らの研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓病協会の医学雑誌「Stroke」に電子掲載されている。
画像はリリースより
脳梗塞は、特に脳主幹動脈が閉塞すると重症になるが、このときに、ほかの血管から脳軟膜動脈を介し、脳主幹動脈の血流を助ける側副血行が発達する。良好な側副血行ができれば、急性期脳梗塞の治療において、発展した静注血栓溶解療法や、カテーテルを用いた血管内治療など、再開通療法の効果がより高まる。しかし、側副血行の発達の程度は個人差が大きい。
そのため、側副血行が発達する機序や要因を明らかにすることで、再開通療法の恩恵を受けられる症例が増え、脳梗塞後の障害を軽減する治療法の開発につながる可能性がある。過去の動物実験では、脳梗塞発症前に慢性高血圧を有していると、側副血行の発達が不良になることが報告されている。しかし、実臨床における高血圧症と側副血行の関連については、検証されていなかった。
脳梗塞発症時の血流を途絶えにくくするには、適切な高血圧予防・治療が効果的
今回研究グループは、2011~2017年に国立循環器病研究センターに入院した脳梗塞患者3,759名のうち、発症から24時間以内の脳血管造影検査で側副血行を評価し、かつ脳主幹動脈のひとつである中大脳動脈の主幹部が閉塞した100例を対象に検証を行った。
まず、対象症例を側副血行の不良群(39名)と良好群(61名)に分類し、脳梗塞発症前の高血圧症の有無や降圧薬の内服歴、脳梗塞発症3か月後の転帰などについて解析した。
その結果、不良群のうち30名(77%)、良好群のうち29名(48%)が、脳梗塞発症前から高血圧症を指摘されていることが判明。側副血行の発達に影響を与えると過去に報告されているリスク因子で調整した多変量解析よりも、高血圧症が中大脳動脈閉塞時の側副血行不良の独立したリスク因子であることが明らかになった。さらに、高血圧症を有する患者の中でも、降圧薬を内服していない患者の方が側副血行は不良であり、降圧薬によって側副血行が改善される可能性が示唆された。また、側副血行不良群の方が、発症3か月後の後遺障害の程度が強い傾向も示されたという。
今回の研究成果から、日々の血圧を管理して高血圧症を予防すること、高血圧症を発症しても降圧薬をきちんと内服することで、脳梗塞発症時の血流途絶に伴う代償機構が働きやすくなることが明らかになった。しかし、高血圧症の罹患期間や降圧薬の種類による側副血行への影響については調査が不十分であり、今後の検討が必要と考えられる。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース