■中医協総会で議論
中央社会保険医療協議会は12日の総会で、インターネットを活用したオンライン診療や服薬指導など、医療現場におけるICTの活用をめぐって議論した。委員からは、オンライン服薬指導に対して「営利企業としての薬局の業務効率化に利用することを目的としている」と厳しい意見が飛び出し、「ハイリスク薬の服用患者を想定し、オンライン服薬指導上の留意点をもう一度整理する必要がある」との声が上がった。また、オンライン診療の算定要件に対して「厳格すぎて普及の足かせになっている。安全性に支障がない範囲であれば、要件を緩和すべき」と要件緩和を求める意見も出た。
この日の総会では、医療におけるICTの利活用をテーマに意見交換した。厚生労働省は、オンライン診療、服薬指導の実施状況や電子お薬手帳の使用実態などを提示。その上で、医療現場でICTの活用を進めるための課題などについて議論した。
オンライン服薬指導について、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「営利企業としての薬局の業務効率化に利用することを目的としていると言わざるを得ない。対面で患者に接しない薬剤師に患者を任せる気にはならない」と批判的な見解を示し、「まずは薬局の偏在解消、在宅での服薬指導に取り組むべき」と述べた。
また、オンライン診療の指針で慢性疾患を適切な例としていることについて、「患者が他の疾患治療のために、重篤な副作用が懸念されるハイリスク薬などを服用していることも想定される。オンライン服薬指導では、慢性疾患の患者であれば誰でもいいという訳にはいかない」と反対し、「服薬指導上の留意点をもう一度整理する必要がある」と強調した。
支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、オンライン診療の算定要件について、緊急時に30分以内で対面診療可能な体制があることを例に挙げ、「あまりに厳格すぎて普及の足かせになっているのではないか」と指摘。「対面診療を原則としつつ、安全性に支障がない範囲であれば、要件を緩和できるところはすべき」と要件緩和を迫った。
吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「疾病を抱えながら働き続けるための環境整備が重要課題であり、その有効な手段の一つがオンライン診療、服薬指導だと思う。僻地・離島や在宅だけでなく、在勤の利活用もテーマに加えるべき」とした。
これら委員からの意見に対し、厚労省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は、医薬品医療機器等法改正後のオンライン服薬指導の方向性について、「オンライン診療に関するルールの運用状況を踏まえ、医薬・生活衛生局内で適切なルールを議論して決める」との考えを示した。