■中国、論文数2位で米を追撃
特許庁は、2018年度の特許出願技術動向調査報告書をまとめた。免疫抑制阻害や腫瘍溶解性ウイルス療法、癌ワクチン療法など、大きな注目を集めている癌免疫療法に関する特許出願件数は、米国人による出願が48.7%と約半数のシェアを占め、日本人の出願は約7%と欧米に大きく水を空けられていた。日米欧中韓への出願人別の特許ファミリー件数ランキングでは、バイオベンチャーのオンコセラピーサイエンスが全体で20位に入り、癌ワクチン療法でも3位となった。免疫増強では、国内製薬企業からTLR7アゴニストの開発を進める大日本住友製薬が9位にランクインした。
02年から16年までの癌免疫療法に関する特許の国際出願件数は5276件だった。出願人の国籍を見ると、米国が2572件(48.7%)と最も多く、次いで欧州1616件(30.6%)、日本は379件と7.2%のシェアだった。中国からも196件(3.7%)が出願されていた。
日米欧中韓など複数国へ出願する癌免疫療法のファミリー出願件数は8645件だった。出願人の国籍は米国が3555件と41.1%を占め、欧州が2213件(25.6%)、中国が1247件(14.4%)、日本は671件(7.8%)となった。
技術区分別のファミリー出願件数で免疫チェックポイント阻害療法は、米国人の出願が55.0%と圧倒的なシェアを誇ったが、中国人の出願が13.0%と欧州の18.4%と肩を並べる出願件数となった。日本からの出願はわずか3.2%に過ぎなかった。
キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子導入の出願については13年以降、急激な増加を示しており、特に米国の出願人が50.2%、欧州の出願人が26.4%と7割以上を欧米勢が占めるが、中国の出願人が16.9%と迫っている。日本からの出願は2.3%にとどまった。
癌免疫療法の特許ファミリー出願件数ランキングを見ると、トップは米国立衛生研究所(NIH)、米国立癌研究所(NCI)を所管する米保健福祉省が258件となり、2位に独イマティクス・バイオテクノロジーズ(193件)、3位にスイスのノバルティス(148件)、4位にスイスのロシュ(126件)、5位に英グラクソ・スミスクライン(124件)、6位に米ペンシルベニア大学(122件)、7位に英アストラゼネカ(117件)、8位に米ダナ・ファーバー癌研究所(99件)、9位に仏国立保健医学研究所(97件)、10位には米ブリストル・マイヤーズスクイブ(95件)と、トップ10にメガファーマと欧米の研究機関・大学が並んだ。
一方、中国からも13位に中国人民解放軍軍事医学科学院、14位に中国科学院と政府系のトップ研究機関がランクイン。日本からは20位にバイオベンチャーのオンコセラピー・サイエンスが唯一20位入りした。
技術区分別の出願件数ランキングを見ると、免疫チェックポイント阻害療法はトップが米BMS、2位にロシュ、3位に米メルク、6位にアストラゼネカ、7位に米ファイザーと、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体の研究開発に精力的に取り組んでいる大手製薬企業がランクインしている。
また、免疫増強では、日本からTLR7アゴニストの開発を進めている大日本住友が唯一9位とトップ10入りを果たした。癌ワクチン療法ではオンコセラピーが3位に入った。
論文発表件数については、02~17年に世界で発表された癌免疫療法に関する論文は1万8244件で、トップは米国研究者が6491件と圧倒的に多く、2位の中国研究者は2497件、3位の日本研究者1572件、4位のドイツ研究者1362件を大きく引き離した。ただ、12年以降は中国研究者の論文発表件数の増加が顕著で、17年には12年比で約2倍増となっている。