東大オンコパネルを基盤に開発推進
東京大学は6月6日、国立がん研究センター研究所、コニカミノルタ株式会社と、がん遺伝子パネル検査「東大オンコパネル(Todai OncoPanel)」を基盤とし、コニカミノルタグループの米アンブリー・ジェネティクス社が保有するグローバルな遺伝子診断技術の知見を融合させる共同研究開発を行うと発表した。この研究は、同大先端科学技術研究センターの油谷浩幸教授、同大大学院医学研究科の宮園浩平教授(理事・副学長)、国立がん研究センター、コニカミノルタ株式会社らの研究グループによるもの。
次世代シークエンサーの発展および国際的ながんゲノム研究の進展により、がん組織の中の多数の遺伝子を同時に調べ、がん組織の遺伝子変異を明らかにする、がん遺伝子パネル検査が実用化されてきた。がん遺伝子パネル検査によって明らかになったがんの遺伝子変異に合わせて治療を行う「がんゲノム医療」を提供する体制が、日本でも推進されている。がんゲノム医療はまだ始まったばかりで、発展を加速させるためには、より包括的な変異情報を取得・解析するプラットフォームとしての包括的がん遺伝子パネル検査の開発が望まれている。
日本人特有の遺伝子変異の解明から医療費抑制まで、幅広く貢献できる可能性
今回の共同研究開発の狙いは、油谷浩幸教授および同大大学院医学系研究科の間野博行教授(当時、現:国立がん研究センター研究所細胞情報学分野長)が中心となり開発してきた世界最先端の東大オンコパネルを基盤とし、コニカミノルタが保有するグローバルな遺伝子診断技術の知見を融合させることで、世界最高峰の次世代包括的がん遺伝子パネル検査を開発すること。特に、がん原性体細胞遺伝子変異の対象の多さと融合遺伝子検出等のRNA解析とに強みをもつ東大オンコパネルと、コニカミノルタ傘下で、生殖細胞系列遺伝子変異検出技術で世界をリードし、世界に先駆けて生殖細胞系列遺伝子変異を評価するRNA検査を商品化した米国Ambry Genetics Corporationの強みを掛け合わせたシナジー効果が期待されている。
開発された次世代包括的がん遺伝子パネル検査は、日本のがんゲノム情報管理センター(C-CAT)のがんゲノム情報レポジトリーの拡充に寄与。また、コニカミノルタがグローバルに展開・普及させることにより、世界レベルでのがんゲノム情報蓄積を図る狙い。日本人特有の遺伝子変異の解明、革新的ながん治療法や診断法の開発、新薬の創出、患者の生活の質(QOL)の向上や、膨張する医療費の抑制などへの貢献を目指す方針。コニカミノルタは、共同研究開発で開発したパネル検査を日本で実施するために、国内での商用ラボの構築に取り組み、国内完結型遺伝子解析サービスの提供を目指す。
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・東京大学先端科学技術研究センター プレスリリース