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環境リスクから身を守る生体防御系に、2つの経路が存在することが判明-筑波大

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2019年06月10日 PM01:15

環境中親電子物質に対する生体防御にNrf2とCSEがどう関わっているのか

筑波大学は6月5日、健康への影響が懸念される環境中親電子物質に対する、生体防御の仕組みを新たに解明したと発表した。この研究は、同大医学医療系の熊谷義人教授、秋山雅博助教らの研究グループによるもの。研究成果は「Environmental Health Perspectives」に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトは日々の生活の中で、反応性の高いさまざまな化学物質(環境中親電子物質)に曝露されており、その健康影響が懸念されている。従来から、親電子物質に対する生体防御機構として、グルタチオン()による抱合反応を介した解毒・排出機構と、その主要制御因子である転写因子NF-E2-related factor2()が重要な役割を担っていることが知られているが、近年、親電子物質が活性イオウ分子と反応し、イオウ付加体形成を介して捕獲・不活性化されるという、新たな仕組みが、同研究グループにより発見されていた。さらに、活性イオウ分子産生酵素()が、このイオウ付加体形成に重要な役割を担うことも報告している。しかし、環境中親電子物質に対する生体防御にはNrf2とCSEが鍵となる可能性は示唆されたものの、その実態は不明だった。

Nrf2とCSEの両方のはたらきが毒性軽減に重要

今回研究グループは、環境中親電子物質に対するNrf2とCSEの役割を個体レベルで評価するため、Nrf2欠損マウスとCSE欠損マウス、および両欠損マウスを用いて検証を行った。これらのマウス、およびコントロール(野生型)マウスに対し、さまざまな環境中親電子物質を曝露した結果、Nrf2またはCSEの欠損により、環境中親電子物質に対する抵抗性が、コントロールと比べて低下することが判明。さらに、その抵抗性の低下は、両欠損の場合に、より増悪化することが示された。

このことは、従来のGSH-抱合反応を介した解毒・排出機構とは別に、活性イオウ分子による、イオウ付加体形成を介した捕獲・不活性化機構が環境中親電子物質の抑制に重要であることを意味しており、Nrf2とCSEが異なる経路を介して、環境中親電子物質の毒性の制御に寄与していることを示している。また、Nrf2の発現量および活性イオウ分子の生体内量が、成体期と比べ、胎児期で有意に低いことも明らかになった。この結果は、胎児期でのCSEの低発現とそれに付随する活性イオウ分子の産生量の低下が、胎児がメチル水銀などの親電子性重金属に対して高感受性を示す一因である可能性を示唆している。

近年、生活環境を介した環境中親電子物質への曝露において、高感受性群である胎児への健康影響が特に危惧されているが、今回の研究により、胎児が高感受性を示す要因として、CSEと活性イオウ分子が関与している可能性が示された。研究グループは、「今後、
期におけるCSEと活性イオウ分子の役割をより詳細に解析することで、環境リスクによる胎児への悪影響の軽減、日常的な環境中親電子の曝露による健康リスクの軽減に大きく寄与できるものと期待されている」と、述べている。

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