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マクロファージにおけるMRTF-A発現増強、動脈硬化症の病態形成に寄与—東京医歯大

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2019年06月07日 PM01:15

マクロファージでのMRTF-Aの発現亢進と動脈硬化の関連性を解析

東京医科歯科大学は6月5日、マクロファージにおけるMRTF-Aの発現増強が、動脈硬化症の病態形成に寄与することをつきとめたと発表した。この研究は、同大学難治疾患研究所分子病態分野の木村彰方教授、安健博助教らと、同大学大学院医歯学総合研究科分子病理検査学分野の副島友莉恵助教、沢辺元司教授、京都大学医学部循環器内科の中川靖章助教、信州大学医学部循環器内科の桑原宏一郎教授との共同研究によるもの。研究成果は、国際心臓研究会の学会誌「Journal of Molecular and Cellular Cardiology」オンライン版に5月22日付で公開された。


画像はリリースより

同大難治研分子病態分野はこれまでに、網羅的マイクロサテライト関連解析によって、新たな冠動脈感受性遺伝子座を同定し、その領域内にあるMRTF-A遺伝子(MKL1)の発現制御領域の多型が冠動脈疾患と関連すること、MKL1の高発現をもたらすことを明らかにしていた。これとは別に、網羅的ゲノム解析によって、冠動脈疾患関連遺伝子座が第9染色体上にマップされているが、そこにはCDKI(cyclin-dependent kinase inhibitor)遺伝子群(CDKN2A, CDKN2B)が存在する。一方、同研究グループは以前に、マクロファージ特異的にヒトMKL1遺伝子を高発現するマウス(MRTF-Atg/+)を樹立し、これが炎症性腸疾患(IBD)様病態(大腸短縮、直腸脱、陰窩炎)を自然発症すること、IBDの実験モデルであるDSS誘導性腸炎への感受性が高いこと、腸管マクロファージの抗炎症機能が低下していることを報告している。また、IBD患者では冠動脈疾患のリスクが高いことや、動脈硬化巣局所におけるマクロファージの増殖・生存機能が動脈硬化の病態形成に関与することも知られている。今回の研究では、マクロファージにおけるMRTF-Aの発現亢進がいかなる分子機序で動脈硬化症の病態形成に関わるかを検討した。

MRTF-Aを標的とした動脈硬化の新規治療戦略に期待

同研究グループは、まず、MRTF-Aが、ヒト動脈硬化プラークに浸潤したマクロファージに強く発現していることを発見。次いで、動脈硬化モデル動物であるApoEノックアウトマウス(ApoE-KO)にMRTF-Atg/+マウスをかけ合わせ、通常食餌環境下における動脈硬化症の病態を検討し、ApoE-KOマウスに比して、ApoE-KO/MRTF-Atg/+マウスでは動脈硬化が重症化し、また動脈硬化巣により多くのマクロファージが集積していることを見出した。さらに、MRTF-Aの高発現は、マクロファージの増殖亢進とアポトーシスの抑制をもたらすこと、さらにはCDKIの発現抑制をもたらすことを、細胞およびマウス個体レベルで明らかにした。これらの結果から、MRTF-Aは動脈硬化性マクロファージの機能を制御することで、動脈硬化症の発症・進展に寄与すると考えられた。

これまでの遺伝学的解析によって、MKL1が動脈硬化症への疾患感受性に関与することが示唆されていたが、その分子機序は不明だった。今回、動脈硬化モデルマウスを用いた生体レベルでの詳細な解析から、MRTF-Aがマクロファージの増殖・生存機能を制御することで動脈硬化巣におけるマクロファージが蓄積し、その結果として動脈硬化症の病態形成に至ることが明らかになった。また、MRTF-Aの高発現は別の動脈硬化関連遺伝子であるCDKIの発現抑制をもたらすことから、研究グループは、「今後、MRTF-Aに着目した動脈硬化症の新たな治療法の開発につながると考えられる」と、述べている。

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