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抗うつ薬で改善しない社交不安症に、認知行動療法が長期的な効果もたらす-宮崎大と千葉大

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2019年06月06日 PM12:00

社交不安症患者に対する認知行動療法の長期的な効果を検証

宮崎大学と千葉大学は6月3日、抗うつ薬で改善しない社交不安症(対人恐怖症)に対して、認知行動療法が長期にわたり確かな効果をもたらすことを臨床試験により明らかにしたと発表した。この研究は、宮崎大学の吉永尚紀講師と千葉大学の清水栄司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、欧州医学雑誌の「Psychotherapy and Psychosomatics」にてオンライン公開されている。


画像はリリースより

抗うつ薬を用いた薬物療法は、社交不安症に対する効果的な治療法として世界的に最も普及している。しかし、一部の患者は抗うつ薬で十分な改善が得られず、次の有効な治療法の確立が課題とされていた。研究グループはこれまでに実施した臨床試験において、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者に対し、16週間(4か月間)の認知行動療法を実施したところ、治療の前後で顕著に症状が改善することを報告していた。しかし、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者が認知行動療法を受けた後(16週以降)も、その効果が長期的に維持されるかについては明らかにされていなかった。

症状が改善するだけでなく、効果も治療終了1年後まで維持

研究グループは今回、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者が16週間の認知行動療法を受けた後、その効果が治療終了1年後まで維持されるか、フォローアップ調査を行った。対象患者42名を、通常治療のみを受ける群(通常治療群:21名)と通常治療に認知行動療法を併用する群(認知行動療法群:21名)の2群に分け、認知行動療法を週1回、50~90分の個人面接を計16回実施した。16週が経過した時点で通常治療群は観察を終了したが、認知行動療法群では治療終了1年後まで経過観察を続けた。なお、16週までに通常診療群のうち1名が抑うつ症状の悪化で研究から脱落し、経過観察期間中には認知行動療法群のうち3名が自己都合で脱落している。

調査の結果、認知行動療法群では介入期間中(16週まで)に顕著な社交不安症状の改善を認め、さらにその効果は1年後まで維持されていた。また、認知行動療法を受けた患者の社交不安症状は、治療を終えた直後よりも1年後の時点でさらに改善していた。このことは、認知行動療法は短期的な効果をもたらすが、その過程で得たスキルや学びが患者の日常生活に十分に取り入れられることで、さらなる改善につながることを意味している。なお、治療終了1年後の時点で、認知行動療法を受けた21名の患者のうち、85.7%(18名)が明らかな改善反応を示し、57.1%(12名)は社交不安症の診断がつかない程度(健常者と同程度)にまで改善したという。

今回の研究成果は、社交不安症の診療ガイドラインの改定など、世界の標準治療に貢献しうる貴重なデータになることが期待される。また、研究グループは現在、英オックスフォード大学と協働しながら、英国と香港で有効性が実証されたインターネットを活用した治療プログラムの日本語版を開発中だ。さらには、認知行動療法で改善しない患者に向けて、他の有効な薬物療法や精神療法を確立することも今後の重要課題であると、研究グループは述べている。

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