調査は、「かかりつけ薬剤師・薬局の多機関・多職種との連携に関する調査研究」の18年度分担研究報告「薬剤師の需給動向の予測および薬剤師の専門性確保に必要な研修内容等に関する研究」(分担研究者:長谷川洋一・名城大学薬学部教授)が実施したもの。18年度から43年度までの25年間の動向を需要と供給に分けて予測した。
需要の見通しは、薬局や医療機関に勤務する薬剤師が全体の約8割を占める傾向に大きな変動がないことを前提とし、65歳以上の人口や処方箋受け取り率、病床数の今後の推移を踏まえ、機械的に試算した。
その結果、薬局薬剤師は43年度には21万1000人の需要となり、18年度の17万7000人に比べて3万4000人の増加が見込まれた。また、病院・診療所の薬剤師は、18年度に5万9000人の需要となり、25年度に5万8000人に減少してから43年度まで同じ需要が見込まれた。
これら結果から、薬剤師の需要動向について、「今後数年間は需要と供給が均衡している状況であり、長期的に見ると薬剤師の供給数が需要を上回ることが示されている」と結論づけた。
ただ、推計は現在の業務の実態が変わらないことを前提に必要となる薬剤師数を機械的に推計したものであり、「対物業務を効率化したとしても、対人業務を充実させることで薬剤師の需要は高くなることが予想される」と指摘。一方で、調剤業務のみに特化し続ければ、「機械化などにより、地域の薬剤師ニーズは減少すると考えられる」と見通した。
その上で、「中長期的な視野で薬剤師が目指すべき方向性をしっかりイメージし、薬剤師に求められる業務に取り組んでいくことが必要」と提言した。
供給数については、今後の人口減少社会を踏まえ、大学進学予定者数の減少予測をもとに推計を行ったところ、「薬剤師総数の観点では今後、現在の水準以上に薬剤師養成が必要となる状況は考えにくい」とした。
さらに、「薬科大学や薬学部の新設が今後も続き、6年制の入学定員が増加し続ける状況であれば、薬剤師供給の増加要因となり得る」と指摘した。
薬剤師数は、地域によっても差があるため、研究班は「今後の人口減少社会における薬剤師の需要の変化も踏まえつつ、詳細な需給動向も検討すべき」と主張。需給見通しは、その時々の社会情勢と密接に関連し、常に変化していくことから、「今後も継続して5年、10年単位で需給動向を見極めることが望まれる」とした。