短波長のレーザー光を当てることで粘膜表面の血管や構造を明瞭に観察可能に
京都府立医科大学は5月8日、レーザー光による画像強調内視鏡観察(BLI-bright)を用いることで早期胃がんの発見率を向上させることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科消化器内科学の土肥統助教、内藤裕二准教授、伊藤義人教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、科学雑誌「Gastrointestinal Endoscopy」に掲載されている。
画像はリリースより
近年、より正確に胃がんを診断することを目的として、さまざまな特殊光による観察(画像強調観察)が開発され、内視鏡検査に応用されている。2012年には富士フイルム株式会社がレーザー光源を用いた内視鏡システムを開発し、レーザー光を用いた画像強調観察であるblue laser imaging(BLI)モード、BLIをより明るくしたBLI-brightモードが日常臨床に応用されている。これらのモードは選択的に短波長のレーザー光を当てることで粘膜表面の血管や構造が明瞭に観察可能となる。
研究グループはこれまでに、白色光と比較して、BLIが胃がんに対する診断能力に優れていることを報告している。しかし、従来から行われている白色光観察では、しばしば胃がんの見落としがあることが報告されており、白色光の限界と考えられていた。そのため、より胃がんの発見率を上げるための方法と開発が大きな課題とされていた。
白色光と比べBLI-brightが有意に胃がんの発見が多く、見落としも減少
今回の研究では、京都府立医科大学附属病院ならびに京都府立医科大学附属北部医療センターで胃がんが現在ある患者、胃がんが過去にあった患者、萎縮性胃炎がある患者ら650人に対して内視鏡検査を行った。白色光でまず胃全体を観察してからBLI-brightで観察する(白色光先行)群298人と、BLI-brightでまず胃全体を観察してから白色光で観察する(BLI-bright先行)群298人の2群に無作為に割り付け、胃がんの発見率を検討する研究を実施。前述のBLI-brightという画像強調観察を行うことで白色光より胃がんの発見が多くなり、見落としを少なくできるか否かを検討した。
その結果、白色光先行群では胃がん24病変中12病変が白色光で見つかったため、白色光での発見率が4.0%、発見割合が50%、見落とし割合が50%だったのに対し、BLI-bright先行群では胃がん29病変中27病変がBLI-brightで見つかったため、BLI-brightでの発見率が9.1%、発見割合が93.1%、見落とし割合が6.9%だった。このことから、BLI-brightの方が白色光より有意に胃がんの発見が多く、見落としを少なくできることが証明された。特にピロリ菌除菌後、胃がんの既往がある、高度の萎縮性胃炎の症例には特に有用であることが判明した。実際に白色光で見逃し、BLI-brightで発見された胃がんの画像では、白色光ではがんと周囲粘膜との見分けがつかないが、BLI-brightでは胃がんが褐色調に見え、周囲粘膜との違いが明瞭に見えるため、発見することができたという。
研究グループは、「白色光に勝る観察光はないと考えられてきたが、本研究によりBLI-brightを用いることでより多くの胃がんを発見し、見逃しを減らすことができることが判明した。本研究成果により、BLI-brightを含めた画像強調技術による内視鏡検査が日本だけでなく世界に広がることにより、より多くの胃がんを早期に発見・診断することで胃がんによる死亡を減少させることが期待される」と、述べている。
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・京都府立医科大学 プレスリリース