■日薬「差はない」と反論
中央社会保険医療協議会は29日の総会で、2020年度診療報酬改定に向けたテーマの一つである「働き方改革と医療のあり方」について議論した。今村聡委員(日本医師会副会長)は、病院薬剤師が不足している大きな理由の一つに「薬局薬剤師との給与の差」があることを指摘し、病院薬剤師の待遇改善を求めた。一方、有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、薬局の管理薬剤師を除くと、薬局に勤務する薬剤師と病院薬剤師で「大きな給与差はない」とする17年医療経済実態調査のデータを紹介。給与差が病院薬剤師不足の要因にはなっていないとの認識を示した。
厚生労働省は、この日の総会に18年度改定の検証調査結果を提示。病棟薬剤師の配置による医師の負担軽減、医療の質向上への効果についてみると、全ての選択肢で「とても効果がある」「効果がある」を合わせた割合が「9割を超えた」とするデータを紹介した。
今村委員は、「病棟薬剤師の役割は大きい」と評価する一方で、「日本は世界一薬剤師を養成しているにも関わらず病棟で薬剤師が不足している。構造的な問題だ」と指摘。大きな理由の一つに、病院薬剤師と調剤チェーンの給与が大きく違うことを挙げ、病院薬剤師の待遇改善に向けて、調剤料などの病院薬剤師の技術料を「きちんと手当てすべき」と主張した。
これに対し、有澤氏は、17年の医療経済実態調査の結果によると、「確かに管理薬剤師はそれなりの給料だが、一般の勤務薬剤師や病院薬剤師の給与はさほど差はないと考えている」とした上で、「最近の薬学生は給与ではなく、薬剤師としての職責を果たせる就職先を選ぶ傾向にある」などと訴えた。
また総会では、12年度診療報酬改定で勤務医の負担軽減策の一環として新設された「病棟薬剤業務実施加算」の届出が全体の約20%にとどまっていることや、病床数が少なくなるにつれて届出率も低くなっているデータも示された。届出をしていない理由として「薬剤師が不足しているため」が81.8%で最も多かったことなどが明らかとなった。
猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は、「病院の薬剤師が不足している」と訴えた上で、特に300床以下の中小病院が同加算を算定できていないと指摘。同加算の算定要件として、2人以上の常勤薬剤師の配置を求めていることなどを要因の一つに挙げ、「1人しか置けない医療機関も多々ある。十分に病棟業務ができていて1人でも対応可能なら、要件を緩和しても良いのではないか」と提案した。
有澤氏は、医療の質を落とさないことを前提とし、常勤、専従の要件緩和について、「慎重に検討していく必要がある」とした。